「ひきこもり女子会」が盛況な3つの理由

ひきこもりの女性たちが集う「ひきこもり女子会」が人気だという。9月22日から全国キャラバンをスタートし、日本初の実態調査も始まろうとしている。不登校新聞の石井志昂さんは、それには理由があると指摘する。

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いま「ひきこもり女子会」が人気です。先日、東京・表参道で開かれた女子会にはなんと100人弱が参加。立ち見も出るという盛況ぶりでした。

参加者の1人、ある20代の女性は女子会のために山形から単身上京しました。もちろん彼女も、家族以外とはほとんど交流がなく、普段は家から出ないひきこもり女子です。それでも1人で上京するのは「初めて仲間と出会えると思ったから」と話しました。

こうした思いを抱えた人たちが全国から女子会を目指して集っています。主催団体の「ひきこもりUX会議」代表・林恭子さんによると、参加者の年齢層は10代~50代で、1回あたり20人ほど。これまでに関東を中心に全国で20回開かれ、参加者は累計で650人にのぼります。

内容はランチ会や飲み会をする”女子会”ではなく「自助グループ」を想像してもらうほうが早いでしょう。参加者どうしが体験を話し合うのがメインです。

しかし、なぜ女子会がこれほどまでに人気なのでしょうか。取材を重ねてみると女子会が「どうしても必要な3つの理由」が見えてきました。

■理由(1)ひきこもり女子が苦しい

ひきこもりと言えば「怠けているだけだ」と思うかも知れませんが、「働いていない」のには理由があります。学校でのいじめの傷が今なお深い人、就活でボロボロになった人、DV、虐待など、理由も経緯もさまざまですが「ラクしてひきこもっている人」はいません。

また、ひきこもっていると、常に本人は将来のことも不安です。傷ついたからこそ、立ち止まって傷を癒しているのに、立ち止まっている自分が許せずに、将来への不安感からますます傷をこじらせている人も大勢います。

しかも、ひきこもり当事者の会は男性がほとんどで、女子会のように「スタッフも含め全員女性」という場がこれまでなかったのです。

■理由(2)ひきこもり女子は孤立しやすい

また、ひきこもり女子は行政からも世間からも「見えづらい」存在です。そのためにひきこもり女子は孤立しやすいと言えます。

女性の場合、ひきこもっていても「家事手伝い」「花嫁修業中」と見られたり、「いずれ結婚すればいい」とも思われたりします。よくも悪くも「ひきこもり」とは見られず、キャリアを積めない本人の不安感は軽視されがちです。

それから「主婦」であっても、ひきこもりの苦しさを抱える人がいます。女子会の参加者で言えば1割~2割程度が主婦でした。

「ひきこもり主婦」は、人付き合いが怖い、働けないなどの悩みを持っています。しかし「主婦」であるがために、その苦しさが誰からも理解されません。「ひきこもり主婦」は、いま日本でもっとも見えづらいひきこもりだと言えるでしょう。

さらに問題なのはここからです。行政も「ひきこもり女子」を見落としています。

内閣府のひきこもりの実態調査では「家事手伝い」や「主婦」を調査対象者から除外しています。

女子会参加者の大半は「家事手伝いと言えなくもない状況」にいます。つまり国の調査では、ひきこもり主婦はもちろんのこと、女子会参加者のほとんどが対象外になった可能性があります。

これは世間と同様、行政もまたひきこもり女子の存在を軽視していると言わざるを得ません。ひきこもり女子は世間や行政から見えづらく、孤立やすい状況にさせられています。

■理由(3)ロールモデルに会える

このように、ひきこもり女子は「苦しく」「見えづらい」という面を抱えさせられています。その問題をより根深くさせているのが「同じ境遇の人と出会えない」という現状です。苦しさを抱える人にとって、同じ境遇の人と出会いは「明日を生きる」ために必要な要素の一つです。

人は自分が理解不能な状態になると不安になるものです。でも、まわりに同じような経験をした人がいれば「先の自分」を想像できます。これを「ロールモデルの提示」とも言いますが、端的に言えば「自分がこの先どうなるのか」が解ると、現状と向き合っていく安心感と勇気を得ることができるのです。

女子会では同じ境遇の仲間と出会えます。それはたくさんのロールモデルと実際に出会えるということです。

女子会の参加者は「初めて自分のことを話せた」「新しい発見があった」「前向きになれた」「一人じゃないと思えた」と言います。それは言葉以上の重みがあるのではないでしょうか。

女子会はニーズの高まりを受け、9月22日より全国10都市12回の「ひきこもりUX女子会全国キャラバン」を展開します。また「ひきこもり女子」が国の調査に表れないことを受け、日本初の「ひきこもり女性実態調査」も開始する予定です。詳細は「ひきこもりUX会議ブログ」で見ることができます。

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