入社や異動のシーズン。世代が違う新入社員や異動してきたばかりの人など、まだうまくコミュニケーションがとれない相手と上手に付き合っていくには、相手のしぐさの裏のメッセージを読み解くことが大切かもしれません。さらに、自分のちょっとしたしぐさやクセが相手にどんなイメージを与えるかも理解しておけば、心地よい人間関係が作れるはずです。
この時期にぴったりの、しぐさの裏に隠された意味を心理学の観点から解説してくれる本『やってはいけない実は不快なしぐさ』を見つけました。
「ぺこぺこおじぎをすること」は相手を拒否する気持ちの表れ
冒頭では、まず「やってはいけないしぐさ」として、以下のようなものが挙げられています。
<ぺこぺこおじぎをすること>
礼儀正しくしているように見えますが、心理学的には逆の意味。無意識のうちに、言葉にならない「どうぞ、このままお帰りください」というメッセージを発信してしまい、相手はそれを不自然さとしてキャッチしてしまいます。
(本書21ページより引用)
<相手の目をじっと見つめる>
「目を見て話すことは大切」と教わってきたかと思いますが、それがいつも正しいとは限りません。
男性は一般的にウソをつくときに目をそらすのですが、女性はいつでも相手の目を見て話し、特にウソをつくときは、必要以上にじっと目を見つめます。「目をそらしたらウソだと思われる」と不安に感じるからです。
(本書23ページより引用)
<過度に相づちを打つ>
賛成している、認めている、というメッセージのようですが、過度になると別の意味が。
相手の話の内容を理解していないし、興味もない。ただ、相手を肯定し、相手の気持ちを満たしながら自分のペースに相手を導くという状態なのです。
(本書45ページより引用)
気づかずにやってしまいそうな内容ばかりです。でも、心理学的に説明されると、確かにそうかも……とドキリとさせられます。
ビジネスの場につけていくべきアクセサリーは?
しぐさだけでなく作法も、場合によっては相手に意図しないメッセージを伝えてしまう――そんな例もいくつか挙げられています。
<親しい人同士で盛り上がる>
大勢の集まる場での内輪話は無作法。そして「知らない人だから」といって背中を向けるのもとても無作法。「あなたに興味はありません」と言っていることに。たとえ人見知りで初対面の人に話しかけにくいと思っても相手に体を向けていれば「じつは話をしたいんです」ということが伝わります。
(本書85ページより引用)
<揺れるアクセサリーをつける>
大事な契約のある日に、華やかな印象を、と揺れるピアスをつけて出かける。
ビジネスの場面では、揺れるイヤリングやピアスは避けたほうがよいとされています。商談では相手の顔や目を見て話しますが、ゆらゆらと両耳でアクセサリーが揺れていると相手はそちらに気をとられてしまい、集中できないからです。
(本書87ページより引用)
ただし、揺れるアクセサリーの例は、相手の気をそらし隙を突くことを目的とするなら、あえてつける、という考え方もあるそう。相手の気持ちに与える影響を考えながら、言葉以外の方法でメッセージを伝える方法として、しぐさや作法の持つ意味を知っておくのは大切なことかもしれません。
自分の要求を通したいときにも、しぐさが有効
本書の著者、心理カウンセラーの小高千枝さんによると
誰かと話をするとき、言葉で伝えられるのは相手に伝わる情報のわずか1〜2割。残りの8〜9割はしぐさや表情、あるいは話すテンポや声
(本書13ページより引用)
なのだそう。そう聞くと、しぐさはクセだからと簡単には片付けられません。小高さんは、心地よい人間関係を築くために、しぐさを意識することが大切、と説いています。
ほかにも、買ってきた食品が傷んでいて交換してもらいたいときに、なめられまいと思って身構えるのは逆効果、気の合わない相手とランチに行かなければならないときは、そのあとに楽しい予定を入れておく、など、日常生活の「気は進まないけれどやらなければならないこと」への上手な対応方法もアドバイスされています。
『やってはいけない実は不快なしぐさ』
著者:小高千枝