「ほぼ奴隷契約に近い求人」…それでも風俗嬢の超危険な海外出稼ぎが横行する理由

本連載でも何度か取り上げた「海外出稼ぎ」。アメリカなど高額チップの文化がある国では、昨年から取り締まりが強化され、シンガポールや台湾など、アジア諸国に飛ぶ日本人が増加している。

歌舞伎町の風俗で働く風俗嬢のマユミ(仮名・24)は、これまでに2度の海外出稼ぎを経験。今は主に日本国内の出稼ぎ風俗で稼いでいる。

「今、日本では誰もが風俗で稼げる時代じゃないんです。人気商売ですから。だから国内の風俗嬢が高給な海外に行きたくなる気持ちはわかります。でも、私はドバイに行ったとき、客に薬物を強要されたのがマジでトラウマで。安易に行くのは危険だなって思います」

実際に海外で勾留された、ビザを没収され軟禁状態で労働させられた、といった話は尽きない。さらに「頼れる人間がいないので店のオーナーに色仕掛けをして生き残るしかなかった」、「稼ぎすぎて、店のスタッフに銃を突きつけられて全額強奪された」など、出稼ぎ経験者の口からは壮絶な話が飛び出す。

そんな中、「経済特区での超高額案件」「60分単価3万円」「保証1日15万円」などの言葉が並び、先月末から界隈を賑わせている出稼ぎ先がある。東南アジア、タイの北側に位置するラオスだ。すでにSNS上では複数のアカウントが好待遇で、風俗嬢やホテルの清掃スタッフとして日本人を勧誘しているが、この出稼ぎ先には大きな落とし穴がある。

在ラオス日本国大使館が今年4月に公式サイトにアップした注意喚起によると、ボケオ県の経済特別区において、外国人を食い物とする求人詐欺が多発しているという。高額な報酬等の好条件を提示してラオスに渡航させた後、実際には自由を拘束し、違法活動に従事させるというのだ。

このボケオ県の「金三角経済特区」は、中国政府がラオスより租借期間99年で借り受けた経済特区。現在はカジノを中心に栄えている。使える紙幣は中国の人民元だ。外交問題に発展するため慎重にならざるを得ないうえ、治安当局による捜査能力が十分ではなく、外国人が危険な状況に陥った場合、その救出や解決は容易でない。

「いやー、ちょっと興味があって調べたけど、普通に怖すぎます……。ほぼ奴隷契約に近い内容ですから」(前出・マユミ)

SNSの求人には「30日間の観光ビザ取得必須」「給料は帰国時に持ち帰り可能」とある。観光ビザで不法就労をしたうえに、無事に働ききらないと給料ももらえない。とんだブラックな求人内容なのだが、単価の高さに目がくらむ人間もいる。

「かといってラオス以外への出稼ぎなら安全というわけではありません。好待遇な出稼ぎ先はほぼ不法入国だし、国自体が売春を禁止していることもある。店が違法店舗なことも。だから見つかれば即アウトなことが多い」(同前)

危険があると知りつつも、SNSを見れば海外出稼ぎによる高収入や、「神客」と呼ばれる富裕層にチップを貰(もら)い、優雅な暮らしを自慢する人々が後を絶たない。

「コロナ禍で外国人向けに海外に出る風潮があるけど、逆に外国人もかなり日本に来ている。出稼ぎ先としては他より安全なのかもね。歌舞伎町では韓デリとかチャイデリの話をよく聞きます」(同前)

「海外にはチップ文化がある」、「日本人の需要がある」といった理由で海外出稼ぎが流行っていた。グローバル化が進む昨今、性産業に限ってはインバウンドに目を向け、国内での稼ぎ方を考えられるかどうかが生き残る肝(きも)となるだろう。

『FRIDAY』2023年8月4日号より

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