「ぽっちゃり女性」に業界熱視線 専門ファッション誌も

 「痩せてから」じゃなくて、「今でしょ」!? オシャレをあきらめがちな「ぽっちゃり女性」向けのファッション提案が盛んになってきた。専門のアパレルが売り上げを伸ばし、ファッション誌も創刊。読者モデルは、体重公表が条件にもかかわらず応募が殺到している。「太っている体を受け入れ、堂々と今を楽しもう」との価値観の台頭。その背景には、ふくよかな女性芸人の活躍や東日本大震災後の意識の変化も影響しているようだ。(文・重松明子 写真・矢島康弘)
 春夏の新作ファッションを身にまとい、ランウェイを闊(かっ)歩(ぽ)するのは小太り2Lから、体重100キロ、ウエスト120センチ越えまでのふくよかな女性たち。堂々たるモデルぶりに会場から「おぉ」とどよめきが起きる。
 16日、渋谷パルコパート3「スマイルランド」で行われたファッションショーの光景だ。 日本初のぽっちゃり女性向けファッション誌「ラ・ファーファ」(ぶんか社)創刊を記念して開かれた。イメージモデルに起用された95キロの女芸人、渡辺直美さん(25)とともにショーに登場した読者モデル14人は、250人の応募者から「肌の美しさ」「顔立ち」「個性」を基準に選ばれた精鋭。身長、体重、スリーサイズの公表を受け入れての応募だった。
 「ぽっちゃりといっても体形は千差万別で、サイズ公表なしにこの雑誌は成り立たない」と、発行人の今晴美さん(38)。
 107キロの体重が事前のウオーキングレッスンで5キロ落ちたという主婦のチンゆうこさん(24)は、「同じ悩みを持つ誰かの参考になれば」と潔い。「健康のためにダイエットはしたいが、30キロリバウンドした経験もあり思うようにいかない。おしゃれなママを目指すため、一歩を踏み出したかった」。
 誌面では、スッキリ見せる工夫など実用例とともに30ブランドの服や小物を紹介。華やかなグラビアから、大柄サイズを展開する女性アパレルの増加がうかがえる。「痩せておしゃれを楽しみたいと願うより、今の自分をどうカワイク見せるかが大事。震災後の今を大切に…という社会の風潮が、最近のぼっちゃり女性の気質にもマッチしたように思う」と今さん。
 渡辺さんも「生きにくかったぽっちゃりが、楽しくオシャレに生きていける環境になってきた。ダイナミックでセクシーな良い所を生かして突き進んでいきましょう」と呼びかけた。
 今年に入りフジテレビの月曜深夜枠で、渡辺さんや森三中が出演する「10匹のコブタちゃん」というトーク番組がスタートしたり、女性漫才「アジアン」の馬場園梓さんが細身女性を押しのけ、吉本興業べっぴんランキングで3年連続1位に輝くなど、ぽっちゃり芸人の活躍や好感度も、一般の意識に影響を与えているようだ。
 同誌とコラボレーションする「スマイルランド」は、通販大手のニッセンが平成14年に立ち上げた、ぽっちゃり女性専用アパレルのパイオニア。細かな悩みに対応する10Lサイズまでを展開し、ランジェリーや小物も開発。実店舗5店の売り上げは年間約5億円に達している。
 厚生労働省「平成23年国民健康・栄養調査」によると、肥満の判定基準であるBMI25以上の成人女性は全体の2割を超え、「大きな市場成長が見込める分野」(ニッセン)と、業界の熱い視線を集めている。
 昨年、スリムなレディー・ガガが激太りした衝撃映像は記憶に新しいが、美食やストレスがあふれる現代社会。誰もが人ごとと笑ってはいられない?!

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