石巻市職員ら3人が逮捕された市発注の下水道工事を巡る官製談合事件。市役所にも家宅捜索が入り、関係者に驚きや動揺が広がった。
関係者によると、10日午後6時ごろに市役所本庁舎で残業していた市職員らに帰宅を促す指示があった。
「建設部が入る5階が閉められた」「何があるのか」。困惑する職員が帰った後の午後6時55分ごろ、段ボールなどを抱えた宮城県警の捜査員約20人が入れ替わるように庁舎に入った。
家宅捜索は午後10時50分ごろまで約4時間続き、段ボール約15箱分の関係書類などが押収された。
「まさかエースが逮捕されるとは…」。市職員2人の容疑者を知る元市幹部は驚きを隠せない様子。星洋一容疑者は2018年から下水道工事の発注業務を担っていた。仕事ぶりの評価は高く、建設部内で「エース」と呼ばれていた。寺内友和容疑者は「真面目な職員」だった。
元市幹部は「(逮捕されたと聞き)びっくりしたし、がっかりした。2人は非常に優秀な職員で自らやったとは思えない」と信じられない様子で話した。
地域の建設業界に詳しい関係者によると、遠藤光弥容疑者は社内で土木分野を担当する幹部で、下水道工事に精通していたという。
遠藤興業は市内屈指の建設業者で、東日本大震災の復興工事を多く受注した。別の関係者は「市内の業界をけん引する存在。官製談合に関わるとは信じられない」と話す。
設計価格漏えいの疑い
宮城県石巻市発注の下水道工事で入札情報を受注業者に漏らしたとして、宮城県警捜査2課などは10日、官製談合防止法違反などの疑いで、石巻市下水道建設課技術課長補佐星洋一(50)=石巻市大街道北4丁目=、下水道建設課係長寺内友和(46)=同市美園2丁目=の両容疑者を、公競売入札妨害の疑いで、同市の建設会社「遠藤興業」専務執行役員遠藤光弥容疑者(67)=同市新成2丁目=を逮捕した。
逮捕容疑は昨年2月15日に実施された下水道工事「西流下1号石巻中央雨水準幹線築造工事」の制限付き一般競争入札に関し、星、寺内両容疑者が遠藤容疑者に最低制限価格を算定する基準価格などが記載された設計書を渡し、落札させて公正な入札を妨害した疑い。県警は3人の認否を明らかにしていない。
捜査2課によると、星、寺内両容疑者は入札の2週間前ごろ、石巻市内で遠藤容疑者に設計書を書面で手渡したという。星容疑者は寺内容疑者の上司で、いずれも工事の概要を知る立場だった。
市の記録によると、設計価格を漏らしたとされる下水道工事は予定価格4838万8000円、最低制限価格4345万5004円。入札には8社が参加し、遠藤興業は最低制限価格を24万4996円上回る4370万円で落札した。落札率は90・3%だった。
工事は石巻市門脇町でマンホールから地下に入った雨水を幹線に流すための下水道整備事業。昨年2月末に始まり、今年1月に完了した。県警は3人の関係性などを調べている。