東京電力福島第一原子力発電所の処理水放出を巡っては、8月24日の開始直後から中国からとみられる迷惑電話が日本国内で多発した。初回分の放出は11日に完了したが、迷惑電話が収束する気配は見えず、関係者の悩みは続く。
福島市のラーメン店「自家製麺うろた」には放出が始まった日の夜、片言の日本語で「カクハイスイ」「バカ」とまくしたてる電話がひっきりなしにかかってきた。店長の遠藤風太さん(26)は翌日の開店前に電話線を抜いたが、元に戻せずにいる。
今でも電話線をつなぐと、30分に1回は迷惑電話がかかってくるためで、団体客のテイクアウトの注文を受けられない。遠藤さんは「誰が何のためにしているのか……」とため息をつく。
福島県によると、県庁や県内の市町村、学校などへの迷惑電話はこれまでに1万件以上に上る。1日30件もの電話がかかってきて、診療に支障が出た医療機関もあるという。内堀雅雄知事は4日の記者会見で、「この事態を非常に憂慮している」と懸念を示した。
自治体も対策強化に動いている。福島市は夜間対応の職員が仮眠をとれないため、深夜から早朝にかけての電話を着信拒否にした。東京都は、迷惑電話がかかってくるとオペレーターが、処理水の安全性を中国語で説明する自動音声を流す。多い日で1日2万件近くあった迷惑電話は約200件に減ったが、今も入電件数全体の6分の1を占める。
東京都江戸川区の区立施設「総合文化センター」は国際電話を着信拒否にした。担当者は「元に戻したら、またかかってくるかもしれない。処理水と無関係の施設なのに、迷惑な行為はやめてほしい」と話した。