「カリガネ」の渡りルート追跡に成功 登米で越冬、ロシア北極圏と往復

 山階鳥類研究所(千葉県)は4日、絶滅の恐れがあり宮城県登米市周辺で冬を越す渡り鳥カリガネがロシア北極圏との間を往復するルートの追跡に初めて成功したと発表した。「約1万6000キロに及ぶ行程が明らかとなり、生態保全に役立つ」としている。

発信器を付けて宮城県北に戻ってきたカリガネ=10月2日(狩野博美さん撮影)

 研究所は昨年12月、登米市内で1羽を捕獲し、識別用の金属リングと発信器を付けて再び放した。

 調査によると、この1羽は今年2月、北上を開始。津軽平野を経由して4月初旬から1カ月余り、北海道北部のサロベツ湿原にいた。サハリンやカムチャツカ半島を経由して5月下旬、ロシア北極圏に到着。繁殖地とみられる川や湿地帯で9月下旬まで過ごした。

 秋の渡りは西寄りのルートを取り、ウラジオストク方面を南下。中国北東部との国境付近で南東へ向きを変え、9月24日未明に秋田県の八郎潟へ飛来後、同日朝には宮城県の伊豆沼に帰ってきたという。

 研究所の沢祐介研究員(37)は「秋にサロベツ湿原に飛来するカリガネもいるため、複数の渡りルートがあると裏付けられた。春にはゆっくり北上し、秋には素早く越冬地に来ることも分かってきた」と話す。

 研究所と共同調査する大崎市の市民団体「雁(がん)の里親友の会」によると、1990年代以降、宮城県内への飛来数はほぼゼロだったが、2010年代以降に増え始め、19年は約300羽を確認した。アジアの主要な越冬地だった中国・長江流域の生息環境がダム開発などによって悪化し、日本側で増えたと推測されている。

 研究所と友の会は今年末、登米市周辺で別のカリガネを捕まえて発信器を付け、来年までの3年計画で調査を続ける予定。

[カリガネ]同じカモ科のマガンに比べて一回り小さく牧草などを食べる。目の周囲が黄色くてかわいらしく見えるため人気が高い。北半球だけで生息し、個体数は推定で2万4000~4万羽。環境省指定の絶滅危惧種。宮城以外では島根県にも飛来した例がある。

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