テレビ不況の昨今、ギャラがかからない女子アナはキー局の頼みの綱。似て非なる彼女たちの魅力を、女子アナウォッチャーが語り尽くす!
ネット上でよく見られる“女子アナ”への反感は、その多くが「アナウンサーのくせに」という意味を内包している。昨今の“女子アナ”たちはニュース原稿を読むことのほかに、多種多様な仕事を与えられるようになってきた。それを考えれば、この手の批判は必然のことだが、その「アナウンサーのくせに」という仕事の内容で、視聴者から支持を受けている女子アナもいる。
その最も顕著な人物は、『ヒルナンデス!』の飲食レポートで話題を集めている日テレの水卜(みうら)麻美アナだ。この水卜アナは「ラーメンは飲み物」や「好きな言葉は肉汁」などの迷言を番組内で発していて、それを証明するかのように、とにかくよく食べる。よく女優やモデルなどが気さくな女性像を狙って豪快に食べる姿をアピールしたりするが、そんなあざとさを微塵も感じさせないほどの食べっぷり。実際、同番組で高級中華料理の飲食レポを行った際には、ギャル曽根と共に50品目をぺろりと平らげていた。また、ある時には、焼きそばを焼いているシーンを見てヨダレを流すという、女子アナとしてはありえない姿まで晒している。もちろん、大食いキャラが定着していることから頑張っている面はあるにしても、料理を前にした時の表情は、仕事を忘れたかのように無邪気なものであることは疑いない。
そんな水卜アナと同様に、テレ東の狩野恵里アナも『モヤモヤさまぁ~ず2』での飾らない言動で注目を集めている。彼女の前任であった大江麻理子アナは、決してメインのさまぁ~ずの邪魔にならず、必要な振りに必要な分だけ乗るという奥ゆかしい仕事ぶりが好評だった。しかし、狩野アナは自らのキャラクターを前面に押し出して、時にさまぁ~ずを瞠目させる言動を行う。もともと体育会系ということから体を使うシーンではテレビを忘れて全力を出し、特技の英語やピアノもフル活用。水卜アナと同様に食欲も旺盛で、焼肉店を訪れた時には、撮影を忘れて真剣な表情で肉を焼いていたこともある。とにかく個性的すぎて、さまぁ~ずから「空気が読めない」と評されているが、そのやりすぎ感は視聴者を不愉快にさせるどころか、おおむね好感を持って迎えられている。
本来、視聴者たちの多くに「アナウンサー=インテリジェンス」という固定観念が根強くあり、だからこそ、タレントまがいの仕事をする女子アナに対して、冒頭に述べた「女子アナのくせに」という反感が生まれる。しかし、多くのアナドルたちとは趣が違うとはいえ、水卜アナも狩野アナも、その固定観念から逸脱していながら、好意的な評価を受けているのは非常に興味深い。
その理由として考えられるのは、自分の素の部分をあっけらかんと晒してしまう無防備さにあるのではないだろうか? 昨今の女子アナたちは、アナウンサーという自負を持ちながらもタレント化を受け入れ、テレビ慣れした器用な仕事ぶりを見せるようになった。制作サイドもアナウンサーという領分を超えた仕事を期待して過激な演出を要求するようになり、バラエティ番組では芸人顔負けの言動で自分をアピールする女子アナも珍しくない。それが人気取りのあざとさに見えるため、どうしても反発する部分が生じてしまうのだが、水卜アナや狩野アナは番組が用意した演出に対して、てらいなくありのままの自分をさらけ出してしまう。その迂闊さが視聴者の苦笑を誘い、どこか憎めなさを感じさせるのだ。
本来なら非難されるべき言動をプラスに変えてしまうという、いろいろな意味で規格外の女子アナともいえる両名。前例がないだけに、これからどんな道を歩んでいくのか、先の読めない逸材であることは間違いない。
(文=百園雷太)