宮城県石巻市鮎川浜の大型展示捕鯨船「第16利丸」が18日、東日本大震災の復旧工事を終えて10年8カ月ぶりに一般公開された。昭和後期に捕鯨産業の第一線で活躍した歴史遺産として保存されていたが、津波で被災した。装いを新たにし、国内屈指の捕鯨基地だった鮎川浜の捕鯨文化を伝える。
捕鯨船は全長約70メートル、幅9・9メートル、重さ約760トン。1958年に完成し、南極海や金華山沖で約30年間操業した。引退後は鮎川浜に開館した観光施設「おしかホエールランド」の敷地に陸揚げされた。観光客が乗船見学できた。
震災の津波で流失は免れたが、船体に多数の傷が付いたため乗船を中止。市が船体を塗装し直し、クジラにもりを撃ち込む「捕鯨砲」や甲板を見学するための通路を再び整備した。
18日はホエールランド広場で再開式典があり、住民ら約120人が参加。大漁旗を掲げた捕鯨船を背に鮎川小の児童15人が和太鼓を披露した。来場者は捕鯨砲が設置された船首に上り、復興工事が続く街並みを眺めた。
捕鯨船の見学は無料。管理する一般社団法人鮎川まちづくり協会の斎藤富嗣代表理事は「津波に耐えたクジラの町の象徴がようやく復活した。船を訪れ、今も続く捕鯨産業を知ってほしい」と話した。