「ゲーセン」お年寄り囲い込みへ

薄暗いイメージのあったゲームセンターが近年、ファミリー向けにイメージを一新している。その中で目立つのがお年寄りたちだ。携帯ゲームの普及や家庭用ゲームの充実で若者の「ゲーセン離れ」が指摘されることから、業者側は新たに“お年寄り獲得”に力を入れている。(織田淳嗣)
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 ◆入りやすさ促進
 JR王子駅前の総合レジャー施設「サンスクエア」(東京都北区)。2階のゲームセンター「ナムコランド王子店」には冬休みの子供たちに交じり、メダルゲームに興じるお年寄りたちの姿があった。
 「ゲームセンターというと最初は抵抗ありましたけど、この中(複合施設)にあったから入りやすかったんです」。近くに住む牧村民枝さん(79)は週に2、3回通う常連だ。
 スロットなどメダルゲームが主で、約3万枚を預けている“富豪”。メダルがあればあまりおカネを使わず、長時間遊ぶことができる。お年寄りのゲーセン仲間だけでなく、学生や浪人生に知人もできた。「『勉強頑張れよ』って説教したりね。やっぱり若い人と話すと若返る」と笑顔で話す。
 王子店では毎週木曜日、60歳以上にメダル貸し出しを倍にするサービスを実施。高木学ストアマネジャーは「もともとお年寄りの多い地域。女性やお年寄りにたくさん来ていただくことで、より『入りやすい』店になる」と接客に力を入れる。数は減ったが、たむろする少年などがいた場合、店員が目を見てあいさつをすることで不良行為を防げるという。
 ◆メーンのお客に
 21年10月オープンしたショッピングモール「COCOEあまがさき緑遊新都心」(兵庫県尼崎市)4階の「セガワールドCOCOEあまがさき」では当初、ファミリー層をターゲットに車の運転など体感ゲームを中心に配置した。しかし、お年寄りが多かったことから体感ゲームを減らし、メダルゲームを増加。いまやお年寄りは重要な客層となりつつあるようだ。
 お年寄りのゲームセンター利用について、九州大学病院リハビリテーション部の高杉紳一郎准教授は「ダンスゲームなどは転倒の恐れがあるので注意が必要」と指摘。そのうえで「身体機能を向上させる『直接効果』より、ゲームセンターでの交流が外出を動機付ける心のスイッチになり、閉じ籠もりを防ぐ『間接効果』が期待できるのでは」と分析している。

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