現地に足を運んで取材や取材対象者にインタビューすることなく、芸能人のテレビ・ラジオ発言、SNS投稿を基に作成される「コタツ記事」。筆者もそんなコタツ記事を書き、編集して生計を立てる生業だ。
第1弾の記事ではネタ探しの方法、記事ができるまでのざっくりとした流れを暴露……もとい紹介したが、今回はお金にまつわる話をしたい。
前回の記事に「大手マスコミも抜け出せない魔の魅力」とタイトルをつけたものの、もっとコタツ記事の “うま味”、大手マスコミにとってどんな “魔の魅力” があるのか紹介するべきだった。ライターとして反省だ。
・ネットニュースはスポーツ新聞社&出版社の救世主
芸能・エンタメ系のコタツ記事を量産しているのはスポーツ紙や週刊誌のWEB媒体が中心だ。そして今、スポーツ紙や週刊誌のような紙媒体は本当に売れない。
最近、自分のお金でスポーツ紙や週刊誌を買った、という人はどれぐらいいるだろうか。特に『ロケットニュース24』のようなWEBメディアを見ているような人は紙媒体に触れないという例も少なくないはず。
でも『Yahoo!ニュース』に掲載されるネットニュース、X(旧ツイッター)に流れてくるトレンドを見ている人はたくさんいる。スマホを持っている人ならいくら避けても逃れられないとも言えるほどに。
そして『Yahoo!ニュース』の「エンタメ」ページでブイブイ言わせているのがスポーツ紙と週刊誌のWEB媒体だ。
自社のニュースをユーザーにクリックしてもらえればスポーツ新聞社、出版社にお金が入ってくる。
一時、多くの出版社が時代の流れとともに淘汰されていくのではないかと言われ、実際に閉業に至った出版社も少なくない。
そんな紙媒体を出す会社の多くを救ったのがネットニュースだった。
例えば、『Yahoo!ニュース』に掲載された記事が1クリックされると新聞社・出版社に0.2~0.4円ほど(Yahoo!との契約による)が入ってくる。
さらに自社の本サイトで記事を1クリックしてもらえれば1円ほど(こっちはGoogleの基準になる場合が多い)が入ってくるという塩梅だ。
・「コタツ記事に一度手を出したらやめられない」ワケ
『週刊文春』(文藝春秋)は元気のない紙媒体において1人気を吐く存在だが、同誌のWEBメディア『文春オンライン』の月間PVは1億を超えることもある。
単純計算になるが、『文春オンライン』だけで1か月1億円を稼ぎ出すということになる。これはジリ貧の新聞社や出版社にとっては大きい。大きすぎる。
『週刊文春』や『文春オンライン』の場合、しっかりと足で稼いだ記事がほとんどだが、多くのスポーツ紙・週刊誌のWEB媒体は時間とお金をかけて取材するのではなく、テレビ・ラジオ発言、SNS投稿を書き起こしただけの記事でOKなのだ。
「コタツ記事に一度手を出したらやめられない」ということがよくわかってもらえるはずだ。
ちなみに『Yahoo!ニュース』の芸能記事には第1段落の下、第2段落に行く前に【画像】といった具合に、記事に関連する画像へのリンクがあることが少なくない。
これは自社の本サイトに来てもらうための姑息な戦略、ポジティブな言い方をすれば涙ぐましい努力でもある。
『Yahoo!ニュース』では0.2円、本サイトまで来てくれれば1円。この差は大きい。
こうしてユーザーのクリック数をコツコツ稼ぎ、ネットニュース、ひいては新聞社や出版社は成り立っている(もちろん紙の新聞や雑誌・書籍も会社にとっては大事だよ)。
でも、これには弊害もあったりする。次回はそのあたりのことをひも解いていきたい。