「コーヒー」が体にいいって本当? 管理栄養士に聞いてみたら…

論文から見るコーヒーの健康効果

コーヒーと健康に関する論文には実に様々なものがあります。

最近の論文では、「成人の場合、1日3杯以内のコーヒー摂取であれば、2型糖尿病とメタボリックシンドロームのリスクを減らす(※1)」というものや、「コーヒーは2型糖尿病や肝臓疾患、胃腸障害などのリスクを下げるのに役立つかもしれないと示唆される(※2)」といった内容のものを上位に見ることができます。

コーヒーが総合的に「健康にいい」と言い切れるかまでは踏み込まれていませんが、いくつかの病気に対して一定の健康効果が報告されている、とみてよいでしょう。

コーヒーと病気予防効果の関係には「カフェイン」「クロロゲン酸」が一役

では、コーヒーには実際に病気予防の効果があるといえるのでしょうか?

現段階では、コーヒーに含まれる「カフェイン」と「クロロゲン酸」が、それぞれの病気の発生率(リスク)と関係があるといった調査研究がされている段階です。体内で何がどう関与して個々の病気リスクが下がるのか、というところの決定打までは分かっていません。

個別に見ると「これだ!」という論文もあるのですが、すべて実験動物が対象のものですので、現段階でそのまま人間に当てはめるわけにはいきません。

今分かっている内容を総合すると、糖尿病、がん、心臓病、肝硬変などはいずれも生活習慣病なので、主にポリフェノールの一種であるクロロゲン酸の抗酸化作用がよい影響を与えているのではないか、というところまでは、研究者の見解として一致していると思います。

記憶力や認知症など脳の健康にも効果的?

先述の通り、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸には抗酸化作用があります。また、カフェインは覚醒作用を持っていますので、脳にも何らかの良い影響を与えると考えられています。

香りにも健康効果が期待できる

また、コーヒーはその香りも豊かなものですが、食品の香りが脳機能に与える効果や、コーヒー豆の香りによる疲労回復効果についても、『食物の香りとその機能性』、『冷えと貧血を予防する香り化合物』、『香りで慢性疲労の予防と恢復を図る』等の論文で報告されています。

コーヒーの香りを嗅ぐと、気分が晴れやかになったり、ストレスによる緊張がふっと和らぐように感じたりする方も少なくないでしょう。「いい香り!」「リラックスできる」と感じている時点で、脳にも良い影響を与えているであろうことは、実体験から考えても想像に難くないかもしれませんね。

コーヒーの健康効果に期待する前に押さえておきたいこと

様々な論文から、コーヒーには健康に対して色々な効果がありそうだ、と感じられたかもしれません。しかし、日本人に限ったことではないのかもしれませんが、「良い」と聞けば過剰に飛びついてしまう風潮はしばしば気になるものです。

健康は大切ですので、健康的な人生を送るためによさそうな食生活を心がけることは大事ですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」ということわざもあります。1つの食材だけを過剰に頼って健康になれるわけではありません。

コーヒーも飲む、緑茶も飲む、そして食事にも気をつける、と色々な食品を少しずつ食べる方が、最終的には健康的な人生に近づけるような気がします。

■参考論文
・(※1)Baspinar B1, Eskici G, Ozcelik AO.;How coffee affects metabolic syndrome and its components.、Food Funct. 2017 Jun 21;8(6):2089-2101.
・(※2)Nieber K1.;The Impact of Coffee on Health. Planta Med. 2017 Nov;83(16):1256-1263.
・『食物の香りとその機能性』(小長井 ちづる 2017.09)
・『冷えと貧血を予防する香り化合物』(我藤 伸樹 他 2011.11)
・『香りで慢性疲労の予防と恢復を図る』

平井 千里プロフィール

メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。

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