「簡単な作業で月に100万円は稼げる」。こんな副業サイトの誘いに乗ったら大変な目に遭いかねない。「稼ぎ方が学べる」とされる教材を何十万円も払って買った揚げ句、「収入につながらず、お金も戻ってこない」といった相談が、福岡県飯塚市消費生活センターに複数寄せられている。新型コロナウイルス禍で広がる生活苦を背景に、県内では副業サイトへ誘導する出会い系の「サクラサイト商法」も横行する。 【画像】副業を巡る消費者トラブルを避ける5つの注意点
■100万円支払いも
同センターによると、誘いの手口は共通する。会員制交流サイト(SNS)の広告などで副業サイトを紹介。「必ずもうかる」としつつ、稼ぎ方は示さない。 知りたい人には、情報を5千円ほどで購入できると案内する。連絡先を登録し、購入するとメールなどで「資料」が届くが、そこに稼ぎ方は載っていない。 やがてサイトを運営するという人物から電話がかかり、稼ぎ方を個人的に学べるサポート契約を結ぶように勧められる。金額は数十万円。金が足りなければ、「もうけた金で取り戻せば良い」と、消費者金融から借りるよう背中を押す。 ところが、金を工面して契約しても結局、稼ぎ方は明かされない。利用者は「これまで投じた金が無駄になるから」と、誘われるまま「次」の契約を結ぶケースも。契約金が100万円を超えた人もいた。
■「出会い系」参入
こうした「副業」への誘導は「サクラサイト」も乗り出す。もともと出会い系のサイトで、10年ほど前から異性や芸能人になりすましたサクラが利用者に高額な商品を購入させたり、有料サイトを利用させたりして「インターネットの新たな消費者問題」と注目された。現在は「もうかる仕事がある」などと高額な契約を持ち掛けているという。 新型コロナ禍で収入の減少が指摘される中、生活に困った人につけ込む手口とも言え、実際、福岡市ではトラブルに巻き込まれたケースが確認された。 飯塚市消費生活センターも相談が目立ち始めたのは8月からで、新型コロナ感染「第5波」の時期と重なる。県に4度目の緊急事態宣言の発出が決まり、経済活動にブレーキがかかったころだ。
■18歳成人を警戒
副業サイトを含む、SNS関連の相談件数は全国で増えている。 国民生活センターによると、昨年度は4万5千件を超え、4年で3倍以上に増えた。今年も9月末時点で2万件を超え、前年同月比で1800件以上多い。 詐欺まがいの取引もあるが、各消費生活センターによると、実際に品物やサービスが売買されている以上、「商品の内容に不満」との位置づけにとどまり、「詐欺罪での立件は難しい」という。契約を解約できたとしても、払った金はほぼ返ってこない。 来年4月1日からは成人年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられ、親などの同意がなくても自分の意思で契約できるようになる。 県消費生活センターは、成人になったばかりの若者がトラブルに巻き込まれないよう悪質商法の典型的な手口を紹介する動画を制作。「契約は慎重に判断してほしい」と呼び掛けている。 (吉武和彦)