「サザエさん時空」「ポルナレフ状態」「マミる」…いくつ知ってる? “ネットスラング化”した漫画・アニメのキャラたち

漫画・アニメ大国であり、インターネットが広く普及した日本。有名な作品のキャラクターが一般化し、ネット上でスラング(俗語)として使われることが増えてきた。
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そこで今回は、知らなくてもいいけど知ってるとネットがもっと楽しくなるかもしれない――“キャラクター名が由来のネットスラング”を調べてみた。
■サザエさん時空  出典:『サザエさん』
作中のキャラクターが永遠に年を取らない現象を指す。ネタ元の『サザエさん』のほか、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ちびまる子ちゃん』など国民的アニメになった長寿タイトルは、この現象がよく見られる。お正月や夏休みといった季節イベントを何度過ぎてもキャラクターが若いままなのは、サザエさん時空にいるためである。ジャンルでいえばリアリティを重視する社会派・シリアス系よりも、矛盾を気にしなくていいギャグ・コメディ系の作品に多いようだ。
余談だが今年2月に100巻で完結したギャグ漫画『あさりちゃん』は、最終話でキャラクターが“サザエさん時空を破る”(あさりちゃんが小学5年生に進級する)ことによって、36年間の長い連載に終止符を打っている。
■ジャイアニズム  出典:『ドラえもん』
強大な力を背景にして一方的な要求を押し通すこと。その基本理念は、作中でジャイアンこと剛田武が発したセリフ「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」に集約されている。ネット上ではジャイアン的な考え方の個人や国家を批判する意味で使われ、もっぱらネガティブイメージを伴う。
それに対して本家『ドラえもん』以外の漫画・アニメでパロディ的に「ジャイアニズム」が登場する際は、藤子先生へのリスペクトが含まれているためか、コミカルなシーンで使われることが目立つ。この場合はネガティブさが若干やわらぐようだ。
■ポルナレフ状態  出典:『ジョジョの奇妙な冒険』
現実離れしたシチュエーションを体験したせいで、自分が見たことすら信じられないほど混乱すること。
元ネタになったポルナレフは『ジョジョ』第三部で主人公サイドに属するキャラクターである。彼は終盤で主人公より先にラスボスのDIOと遭遇するが、DIOが持つ謎の能力によって“階段を登ったはずが知らない間に階段を降りていた”という理解不能な体験をする。それを主人公たちに語った際の特徴的なセリフまわしも含めて「ポルナレフ状態」と呼ばれる。
ネット上では、目にしたニュースや議論の内容があまりに想像とかけ離れていた場合に「ポルナレフ状態」と評されることがあり、専用のアスキーアート(文字と記号を組み合わせてイラスト化したもの)も作られている。自分の言いたいことに合わせて『おれは奴の前で…』の部分を改変するのがお約束だ。
■ウォーズマン理論  出典:『キン肉マン』
なんとなく正しいように見えて、よく考えたらツッコミどころ満載の理論を指す。ネタ元になったウォーズマンは強さを表す数値「超人強度」が100万で、そんな彼が超人強度1000万のバッファローマンに挑んだ際、この理論を叫んだ。
ウォーズマンいわく必殺武器のベアークローを両手に装着して2倍(→200万)、いつもの2倍ジャンプすることで強さも2倍(→400万)、さらにいつもの3倍の回転で突撃することで強さ3倍(→1200万)。これにより「おまえをうわまわる1200万パワーだーっ!!」だという。……うん、よくわからない。戦いの結果もお察しの通りである。
ネット上では無茶な理屈を展開する作品に対して「まるでウォーズマン理論だ」と茶化すほか、作者のゆでたまご先生のことを“矛盾はあってもすばらしくおもしろい漫画を描く天才”と称える時にもウォーズマン理論がしばしば引き合いに出される。なお、ウォーズマンvsバッファローマン戦以外にも作中では同様のトンデモ理論が幾度となく登場し、それらを「ゆで理論」「ゆで物理学」などと総称することもある。
■マミる  出典:『魔法少女まどか☆マギカ』
頭部を失って惨死すること。ネタバレになるため具体名は伏せるが、作中に登場したある人気キャラクターの死に様が元ネタとなっている。単にむごい死に方をするだけではなく、首から上の損壊が「マミる」の必須要素と思われる。さらに絶命後、脱力した首から下の身体がぷらんぷらんと揺れる描写も加われば、正しくオリジナルの意味で「マミる」になる。
ネット上では漫画、アニメ、ホラー映画のジャンルを問わず上記のような死に方が映し出された時に「マミったあああぁ!」などとファンによって書き込みされる。サブカルチャー発祥のスラングとしては比較的新しく知名度が高いのも特徴で、「現代用語の基礎知識 2012年版」に収録されたほか、テレビ番組でも紹介された。
■ヤムチャ視点  出典:『ドラゴンボール』
キャラクターの動きが速すぎて常人には理解できない・見えない状態(※ニコニコ大百科より引用)。ほかのワードに比べて知名度は劣り、実質的に動画サイト「ニコニコ動画」限定のスラングだが、発想がユニークなので最後に紹介したい。
ヤムチャは『ドラゴンボール』序盤から登場し、主人公より長身・イケメン・独自の拳法を使う……などライバル感あふれるキャラクターだった。アニメ版では演じる声優も主人公レベルだ。しかし周囲のパワーがどんどんインフレする中で取り残され、ストーリー中盤以降はほぼ噛ませ犬に転落。そんな彼の悲哀がこの「ヤムチャ視点」という言葉から感じられる。
ニコニコ大百科ではスピード面だけが解説されているが、実際にタグ検索してみると、上手すぎるゲームプレイ動画、熟練の武道家による演武などもヒットする。使われていくうちに本来の意味が拡張され、“レベルが高すぎて普通の視聴者には真似できない状態”を指す言葉になっているのかもしれない。
以上、代表的な“漫画・アニメのキャラクターがネットスラング化した例”を調べてみたが、こうしてみると連載(アニメ放送)スタートから20年以上になる定番タイトルを元ネタにするスラングが大半なのに気付かされる。そんな中で2011年に登場したニューフェイス『魔法少女まどか☆マギカ』が異彩を放っているのはさすがだ。
自分の生み出したキャラクター名が広く使われる――このことに原作者がどんな気持ちを抱いているかはわからないが、少なくともファンからそれだけ親しまれている証明であり、“人気のバロメーター”の1つだとは言えるだろう。果たしてこの先、大ヒットしている『ONE PIECE』や『進撃の巨人』からもスラング化されるキャラクターが登場するのか? 注目していきたい。

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