「ジョブ型」で広がる学び直し 昇格もスキル次第、給料は?  春闘

 大手企業が社員の学び直し(リスキリング)に力を入れている。  仕事内容を明確化し、その職務に応じて処遇する「ジョブ型」の雇用形態への移行が進み、社員の側も会社が求めるスキルが明確化して主体的に学びやすくなった。スマートフォン講座などで新たな「武器」を身に付ければ年齢や経歴に関係なく管理職などに昇格できる一方、給料アップにつながったケースはまだ限られるとの調査結果もある。 【図解】「学び直し」で目指す好循環  2022年度にジョブ型の適用範囲を一般社員にも広げた富士通は、会社主導だった人材育成を社員の自主性に任せる方針に転換。集団研修をやめ、自分でキャリアプランを描きやすくなるよう社員同士が仕事や将来について話し合える場を設けた。目標を定めて必要な資格をはっきりさせるのが狙い。スマホなどで手軽に受けられる講座も提供する。  管理職登用も立候補制に変更。昨年は役職定年を迎えた50代後半の課長や、入社2年目の課長級社員が誕生した。平松浩樹執行役員は「若手もベテランも挑戦できる。学びに遅すぎるということはない」と強調する。  すべての正社員のジョブ型移行を進める日立製作所は昨秋、学び直しの支援システムを導入した。社員が登録したスキルや学びたい内容に合わせ、人工知能(AI)が約2万コースの中から最適なプログラムを選んでくれる。  今年の春闘では、異動希望者を公募する制度の拡充や、副業の解禁を決めた。目的が本業でも副業でも、社員が自発的にスキルアップに取り組むのを支援する。田中憲一執行役常務は「社員が自らキャリアを作っていくことが、会社の成長にもつながる」と話す。  スキルアップすれば給料は増えるのか。就職情報会社マイナビ(東京)が正社員800人に行った調査で、学び直しが昇給につながったと答えたのは1割にとどまった。「マイナビ転職」の荻田泰夫編集長は「企業がどのようにして昇給や昇格などを評価するのか、積極的に情報開示する必要がある」と話す。  政府は学び直しに前向きな企業への支援をてこに「労働移動の円滑化」を目指しており、労働者側には「解雇」が広がるのではないかとの懸念もくすぶる。富士通は昨年3月、約3000人の早期退職を実施し、人材の入れ替えを進める。連合の芳野友子会長は「労働移動は自発的にするものだ」とくぎを刺している。 

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