ロボットは工業界や産業界において普及しており、個人でロボットを所有する時代も将来的に訪れると考えられます。こうした個人用ロボットの中でも「セックスロボット」が普及する際の法律的な諸問題について、南オーストラリアの法律協会が会報に議論を掲載しています。
The Bulletin – Law Society of South Australia – August 2021 by lawsocietysa – Issuu
Sex with robots: How should lawmakers respond? – Scimex
Legal Researchers Weigh in on How Future Laws Should Deal With The Rise of The Sexbots
2017年の調査ではアメリカ人の49%が「ロボットとのセックスは今後50年以内に一般的になる」と回答しており、セックスロボットが将来的に普及するという考えは当たり前になりつつあるといえます。しかし、セックスロボットの普及にあたっては、「セックスロボットの定義」「子ども型のセックスロボット」「安全性」などの問題が存在します。
セックスロボットの普及が目前に、法規制の解決すべき課題とは? – GIGAZINE
こうしたセックスロボットにまつわる法的な問題について、南オーストラリアの法律協会が2021年8月号の会報の中で取り上げた議論が話題を呼んでいます。セックスロボットが行う医療行為に関する2019年の研究では、セックスロボットの利用を望む人の意見をまとめた結果、希望者は「社会不安を改善したい」「一夜限りの関係や売春に頼りたくない」「早漏の問題を改善したい」という動機を抱えている率が高いことがわかっています。
こうした結果からセックスロボットは性に関する不安の解消や高齢者や障害者へのエンパワーメント、勃起不全の治療、性的嗜好に不安を抱える人への安心感の提供などに役立つと考えられていますが、一方で、「セックスロボットは女性のモノ化を促進し、女性が性的暴力の被害に遭うリスクを高める」という批判も存在します。こうした批判に対処するため、性犯罪の立件要件を回避するように、ユーザーからの性的な誘いを拒否するプログラムを組み込んだセックスロボットもオーストラリアには登場しているとのこと。
南オーストラリアの法律協会が取り上げたのは、セックスロボットが間接的に女性に影響を与えるという見解です。セックスロボットにまつわる法律に詳しいフリンダース大学のマディ・マッカーシー氏によると、技術の進歩や需要の増加、国民の関心などの要素によって、オーストラリアの政策立案者は近い将来「セックスロボットの規制を求める声」に直面する可能性が高いとのこと。マッカーシー氏は、現状の法律ではロボットとの性交自体に関する規制は存在しないものの、「子どもに見えるセックスロボット」に関する規制が存在することに触れて、「個人の利益と公共な利益のバランスを取るように、倫理的・規制的・法的な課題に対処する必要があります」とコメント。フリンダース大学の法務部長であるタニア・レイマン准教授もセックスロボットが性犯罪を助長するという可能性に目を向けるべき、という意見を述べて、「子どもに見えるダッチワイフに関する罪は10~15年という量刑が定められているにもかかわらず、下限に近い判決が下る場合がほとんどです」と指摘。ロボットに対する性的加害が人間に対する性犯罪ほど深刻なものではないと見なされていることが、法をゆがめている可能性があると主張しました。