「ゼネコン」工事多いのに採算悪化のなぜ

■劇的な環境変化が「序列」も変えた!   受注競争の激化、建設コストの高騰、若者の業界離れ、株主からの揺さぶりという四重苦がゼネコン各社の経営を圧迫している。劇的とも言える環境の変化は、業界内の「序列」も変えた。  上場スーパーゼネコン4社の前2020年度営業利益は1位大成建設1305億円を筆頭に、2位鹿島、3位大林組、4位清水建設という順番だった。  ところが今2021年度の営業利益見込みは1位鹿島1095億円、2位大成建設900億円、3位清水建設765億円、4位大林組345億円と変動する。

 一方、大和ハウスの2021年度営業利益見込みは3200億円だ。  スーパーゼネコン4社の営業利益の合計は3105億円のため、4社が束になっても大和ハウス1社にかなわない。 『週刊東洋経済』2月7日(月)発売号は「ゼネコン四重苦 序列激変と大和ハウスの猛攻」を特集。かつての建設不況期とは様相の違う「激動期」に突入したゼネコン業界の今に迫った。  大和ハウスは住宅だけでなく物流施設や商業施設へ果敢に投資し、業容を急拡大。傘下にゼネコンのフジタを抱え(2013年に完全子会社化)、もはやゼネコン化している。ホテルなどの工事では競争相手として、ゼネコンの前に立ちはだかるもことある。

 こうした建設業としての顔に加え、大和ハウスにはもう一つの顔がある。  それは土地を仕入れて建物を開発するデベロッパーとしての顔だ。つまり、ゼネコンからすると大和ハウスは施主=「お客さん」としての側面も強い。  大和ハウスの物流施設の展開力はすさまじく、開発した全国の物流施設数は2021年9月末時点で312カ所(施工中を含む)と業界トップ。「いまや大和ハウスはデベロッパーの『価格リーダー』だ。情報をかなり集めたうえで工事価格を提示してくる」(中堅ゼネコン幹部)。

 大手ゼネコンは江戸時代や明治時代に創業した老舗企業が多く、道路や橋梁、大型ビルなどで多くの建築実績や高い技術力を持つ。それに対して、大和ハウスの創業は戦後の1955年。扱う建築物件も、規模が比較的小さい住宅が中心だ。会社の規模に大きな差があったこともあり、ゼネコン関係者はハウスメーカーを格下に見る傾向があった。  ところが今や経営規模は逆転している。例えばスーパーゼネコン・大成建設は2020年度売上高1兆4801億円、時価総額8611億円(2月3日時点)。対して、大和ハウスは2020年度売上高4兆1267億円、時価総額2兆2605億円(同)。2055年には「売上高10兆円」の目標もぶち上げている。

■工事の大型化は採算が厳しくなる側面も  快進撃を続ける大和ハウスとは対照的に、ゼネコン各社は疲労困憊の状態にある。「仕事はあるのに、利益率がぐっと落ちてきている」。スーパーゼネコン・清水建設の井上和幸社長は、現在のゼネコンの「豊作貧乏」ぶりをそう語る。  建設経済研究所によると、2022年度の建設投資見通しは前年度比0.3%増の62兆9900億円。過去20年間で最も多い。建築では再開発工事、土木では国土強靱化関連工事が底堅く推移する。

 だが、「(請負額が)1000億円を超える工事が普通に出てくるようになった」と大成建設の相川善郎社長が語るように、工事は大型化傾向にある。特に、首都圏の再開発工事は規模が巨大化。ゼネコンにとって工事の大型化はプラスのように見えるが、採算性が厳しくなる側面がある。  大型工事の発注者である大手デベロッパーにしてみれば工事価格が安ければ安いほどよく、値下げ圧力は強い。「デベロッパーの価格交渉がこれほど厳しいものになるとは想像していなかった」と吐露するのは、銀行からゼネコンに転籍した中堅ゼネコンのある社員だ。

 「再開発案件は、ほとんど赤字なんだよね」。大手ゼネコンの役員たちは会合で顔をそろえると、こう嘆いているという。  総合商社大手の伊藤忠商事が西松建設に出資するなど異業種参入も顕在化した。逆風が吹き付けるゼネコン業界は、業界再編を含めた地殻変動が起きつつある。 『週刊東洋経済』2月12日号(2月7日発売)の特集は「ゼネコン四重苦 序列激変と大和ハウスの猛攻」です。

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