「ツレがうつになりまして。」 心にしみる「かわいいお話」

 8日公開の「ツレがうつになりまして。」(佐々部清監督)は、鬱病と向き合って生きる夫婦を描いた作品だが、ほのぼのとした夫婦愛とユーモアいっぱいの秀作に仕上がっている。宮崎あおい(25)と堺雅人(37)が手を取り合って生きる夫婦を好演。宮崎は「どこにでもいる夫婦の物語になった」と満足そうだ。(岡本耕治)
                   ◇
 主人公は、激務に追われて鬱病を発症した会社員の“ツレ”こと幹男(堺)と、その妻で売れない漫画家の“ハルさん”こと晴子(宮崎)。原作は細川貂々(てんてん)(42)の実体験に基づくエッセー漫画で、鬱病のわかりやすい解説も盛り込まれ、ベストセラーとなっている。
 宮崎は「かわいいお話。ハルさんは適当で、自分のことをネガティブと思っているけど、案外ポジティブ。あまり出会ったことがないキャラクターなので、演じたら面白そうだと思った」と話す。
 病状が悪化しても仕事に固執する幹男に、晴子は「会社を辞めないなら離婚する」と宣言。家で主夫業をすることになった幹男は疎外感にさいなまれ、「世間様に申し訳ない」と泣いてばかりいる。そんな幹男を、堺がどこか愛らしさを感じさせながら好演している。
 宮崎が堺と夫婦を演じるのは、NHK大河ドラマ「篤姫」(平成20年)に続いて2度目。
 「堺さんは役について、徹底的に調べる人。私は現場の空気を感じて役を作っていく。アプローチはまるで逆だけど、演じていてすごく気が合う」
 ペットのイグアナを見て、「僕も(寂しさを感じない)爬虫(はちゅう)類になりたい…」と幹男がつぶやくシーンがある。晴子はそんな彼の手を自分の胸に当て「爬虫類になったら、こんな風に温かくないんだぞ」とささやく。
 「あのとき、堺さんのメガネが曇っていて、目が見えなかった。まるで泣いているようで、私にもツレが感じているぬくもりが伝わった気がして、たまらなく寂しくなった。堺さんとの共演は、お芝居が予想外の展開を見せることが多い」
 晴子が出入りする骨董(こっとう)店の店主が、明治時代のガラスビンを示して「たかがガラスビンだが、割れなかったから今ここにある」という。宮崎のお気に入りのセリフだ。
 「人はきっと簡単に割れてしまう。割れないためには努力だけではなく、まわりのサポートも重要なんだって思った」
 「必要のない人間なんていない」「つらいときはがんばらなくてもいい」…。これまで何度となく聞き流してきた言葉が、心にしみる作品だ。

タイトルとURLをコピーしました