「ディスコ」に向かう50~60代 大人の恍惚…70年代再ブームの兆し

1970年代から80年代に青春時代を過ごした世代向けのディスコイベントが増えている。ホテルや百貨店がイメージアップや顧客開拓のために開催しており、かつてディスコで踊り明かし、「格好良く遊べる場所」を求めていた中高年のニーズとも合致したようだ。(日野稚子)
 ◆主催者も驚く350人
 11月22日、百貨店、そごう横浜店(横浜市西区)2階の屋外スペースに特設された会場に約350人が集まった。薄暗いダンスフロアで輝くミラーボール。来場者の多くは50~60代だ。
 日本でディスコブームのきっかけとなった米映画「サタデー・ナイト・フィーバー」で曲が使われたKC&ザ・サンシャイン・バンドの「ザッツ・ザ・ウェイ」がかかると来場者が一斉に踊り始めた。
 その後もドゥービー・ブラザーズの「ロング・トレイン・ランニン」やクール&ザ・ギャングの「ゲット・ダウン・オン・イット」など70年代や80年代の曲で会場は盛り上がった。
 70年代に東京・新宿のディスコに通っていたという東京都練馬区の会社員、嶋本久さん(65)は「当時、好きだった曲もかかったし、来てよかった」と満足そうな様子。
 ディスコが夫婦の出会いの場だったという千葉県船橋市在住の富島秀成さん(50)と由紀さん(49)夫妻は、思い出の曲がかかると同じ振り付けのダンスを披露した。
 この日のディスコイベントは「TOKYO MX」の人気番組「Disco Train」の公開収録で、同店のオリジナルアパレルブランド「アベックモード」の販売促進策の一環。
 「本当にディスコで人が集まるのか不安だった。数日前から問い合わせが寄せられるようになり、想定以上の人が集まったので驚いた」と同店の広報担当者は語る。
 ◆開催のホテル増加
 70年代に巻き起こったディスコブームに青春を投じた世代は50代、60代を迎えている。子育ても一段落し、生活にゆとりも出てきたという世代だが、「自分のペースで遊んで楽しめる場所がない」という声も多い。こうしたニーズに応えようと、ディスコイベントを開催するホテルが増えている。
 その一つが「グランド ハイアット 東京」(東京都港区)のディスコイベント「CLUB CHIC(クラブシック)」だ。70年代の音楽に限定して平成17年に初開催。以降、年に2~4回開かれ、21回目となる8月のイベントには約1500人が参加した。
 セールス&マーケティング部の江口奈津江マネージャーは「大人が格好良く、安心して遊べる場をホテルとして提供しようというのがきっかけ」と話す。
 費用は一般席が1万5千円(ドリンク代、税・サービス料込み)。さらに高級シャンパン飲み放題が付いたVIP席は2万5千円と高額だが、「VIP席から先に売れていく」(江口マネージャー)。今月26日にも開催予定で、多くのリピーター客の参加を見込んでいる。
 同ホテルに影響を受け、3年前にディスコイベントを始めたのは、オリエンタルホテル広島(広島市中区)だ。
 担当者の森田麻水美さん(35)は「安全に楽しめる大人の遊び場を提供することで、地元への恩返しがしたかった」と語る。
 参加者の年齢層は幅広く、50代前半かと思った女性客に「還暦過ぎたのよ」と打ち明けられ、驚いたこともあるという。「事前にドレスコード(服装のルール)を問い合わせてきたり、見知らぬ人と同じ振り付けで盛り上がったり。それもディスコ文化なのでしょうね」。時間と空間を越え、若かりし頃に戻れる機会として熱望する声も多く、次回は来年2月の開催が決まっているという。
 ■安心安全な環境、踊って一体感
 50~60代の中高年の間でディスコイベント人気が高まっている理由について、音楽プロデューサーでディスコDJ歴32年目のDJ OSSHY(オッシー)さん(49)は「ダンスとともに体に染みこんだ音楽を再び楽しみたいと思っても、昔のようなイメージで遊びに行ける場所がない。安心安全で信用できる環境を求めている人が多いのでは」と分析する。
 おしゃれをしてダンスに興じ、曲によっては決まった振り付けがあり、合わせて踊ることで一体感が生まれる。
 オッシーさんは「ディスコ自体は47~54歳が中心層だと思うが、同時期に音楽を聴いていた50代後半や60代、40代前半にも広まっている。ディスコカルチャーが世代を結ぶ鍵になるかもしれない」と話している。

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