睡眠作用のある「デートレイプドラッグ」と呼ばれる薬物を使った性犯罪の捜査を迅速化するため、警視庁捜査1課が、薬物摂取の有無を短時間で鑑定できる全国初の簡易検査キットを開発した。これまで最長1カ月程度かかっていた鑑定を数分に短縮でき、摂取した薬物の種類も特定できる。同課は「早期に事件性の有無を見極め、一件でも多く検挙してデートレイプをなくしていきたい」としている。 【写真】性暴力の「沈黙の闇」切り裂いた被害者の声 デートレイプは、知人やネット交流サービス(SNS)で知り合った人から睡眠薬や精神安定剤などの薬剤を混ぜた酒を飲まされるなどして抵抗できない状態にされ、性的暴行やわいせつ行為を受ける被害を指す。 捜査1課によると、被害者は「突然、睡魔に襲われた」「起きたら記憶がなく、着衣が乱れていた」などと異変を感じつつも、薬の影響で記憶が不鮮明だったり、酒酔いによる失敗と思い込んだりして、警察への相談をためらう人が多い。被害を相談しても、薬を飲まされたことを立証する鑑定結果が出るまでに最長1カ月程度かかるため、その間に思い悩んで被害を取り下げてしまうケースも多いという。 警察庁によると、全国で検挙された睡眠薬を使った性犯罪事件は2012年に17件だったが、17年には5倍の85件に増加。18年以降は43~60件で高止まりしており、表面化していない事件も多いとみられる。 被害者の負担を減らして泣き寝入りさせず、素早く初動捜査に取りかかるため、捜査1課は21年に民間会社に打診し、共同で簡易検査キットを開発した。 キットは被害者の尿から数分で薬物の有無を判定できる。デートレイプで悪用される頻度が高い薬物に反応する仕組みで、摂取させられた薬物の種類も特定できるという。検査キットは簡易鑑定のため、これまで通り本鑑定も実施する。 警視庁は今年4月から本格運用を開始し、25日までに島部を除く東京都内97署に検査キットの配布を完了した。すでに10件以上の事件で使用され、検査キットでの鑑定をきっかけに逮捕に至ったケースもあるという。 性犯罪捜査に携わる女性警部は「キットの導入で被害者の負担はずいぶん減った印象がある。悩んでいる人は気軽に相談してほしい」と呼びかける。相談は24時間対応している全国共通の性犯罪被害相談電話(#8103)へ。【木原真希】