自動車産業振興に向け、東北各県で地元企業による人材育成を公費助成する動きが広がっている。今春開校したトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の企業内訓練校が、外部からの研修生受け入れを開始したのをにらんだ。地元企業に社員の派遣を促し、競争力向上につなげる狙いがある。
同社の訓練校「トヨタ東日本学園」は1年間の長期、2カ月間の中期、5日間の短期の各コースで地元企業から研修生を受け入れる。派遣元企業は1人当たり長期で93万5000円、中期33万7000円、短期4万3000円を負担する。
育成費補助に乗り出したのは、トヨタ東日本の生産拠点がある岩手と宮城、多くの部品企業を抱える山形の3県。いずれも新制度を設けたり、既存の枠組みを拡充したりして対応している。
山形県は本年度、300万円の予算を組み、自動車関連企業向けの支援策を事業化した。自動車メーカーが主催する研修の場合は費用の2分の1、それ以外は3分の1と補助率に差をつけた。
学園の長期コース活用を念頭に、上限は1社当たり100万円に設定した。県雇用対策課は「取引拡大や新規参入につなげたい」と意気込む。
既存の補助制度を拡充したのは岩手県。本年度は学園への派遣が増えるのを想定し、前年比100万円増の400万円の予算を確保した。上限は山形と同じ100万円に設定し、長期の経費に充当できるよう配慮した。
トヨタ東日本のお膝元となる宮城県は短期コース活用に照準を絞った。昨年度、新たな支援制度を設け、車両や部品メーカーの社会人向け研修に参加する場合、1社当たり10万円を補助する。
県自動車産業振興室は「学園が開校した本年度が制度の実質的なスタート。トヨタ方式を各社に浸透させたい」と意気込む。
青森、秋田、福島の3県は「県主催のセミナーを充実させたい」(福島県企業立地課)などとして、同種の補助制度を設けていない。