「ナノテラス」世界最高を更新 物質解析能力が従来の1・5倍に 東北大青葉山新キャンパス

量子科学技術研究開発機構(量研、千葉市)は19日、東北大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)の次世代放射光施設「ナノテラス」で、物質の解析能力が従来の1・5倍になる新装置を開発したと発表した。解析能力のこれまでの世界記録を更新し、より精密な物質の解析を可能にする。

研究員「これまで見られなかった分野への挑戦可能に」

 開発したのは、放射光を取り出す長さ76メートルの専用ビームラインと「2D-RIXS分光器」と呼ばれる長さ12メートルの装置。物質にエックス線を当てると、エネルギーがわずかに小さくなって跳ね返ってくる「共鳴非弾性エックス線散乱(RIXS)」という現象を利用し、照射時と跳ね返り時のエネルギー差を測定する。

 新装置は測定できるエネルギー差の限界を表す「エネルギー分解能」を向上させたことが特長。分解能は16・1ミリエレクトロンボルト(eV)で、これまで世界最高だった米国の放射光施設NSLS-IIの22ミリeVを上回り、より小さなエネルギー差を見極められるようになった。

 今回、極めて明るい放射光を生み出せるナノテラスの特性と高性能な各種装置との組み合わせで、世界水準を超える実績を生んだ。

 19日はナノテラスで報道機関向けの説明会があった。新装置の開発に携わった量研ナノテラスセンターの宮脇淳主幹研究員は、今後の高温超伝導の詳細な仕組みの解明や量子力学の研究進展などに期待感を示し「これまで見られなかった分野に、新たに挑戦できるようになる」と語った。

 ナノテラスのビームラインは、先端研究向けの共用3本と民間利用向け7本の計10本を整備。新装置は共用1本に備え付けられ、2025年3月に利用を開始する。出資すると利用権が得られるコアリション(有志連合)用の7本は今年4月から稼働している。

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