「ネットカジノ利用していない可能性」専門家が指摘する3つの”抜け道”4630万円はどこに…海外サイトなら捜査に1年かかる場合も

山口・阿武町が誤って振り込んだ4630万円の一部を別の口座に振り替え不法に利益を得たとして警察は18日、電子計算機使用詐欺の疑いで無職の田口翔容疑者(24)を逮捕しました。

田口容疑者は「4633万円を海外のネットカジノで使った」と弁護士に説明しているということですが、専門家は「ネットカジノを利用していない可能性もある」としたうえで、3つの”抜け道”があると指摘します。消えた大金は戻ってくるのでしょうか。専門家に聞きました。

■誤送金問題で容疑者逮捕 今後の捜査のポイントは

井上貴博キャスター:
容疑者が逮捕されたわけですが、発端となった阿武町の送金ミス、このことの責任やチェック体制の構築というものも求められていきます。

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18日、電子計算機使用詐欺の疑いで、無職の田口翔容疑者(24)が逮捕されました。4630万円を誤った振り込みと知りながら、決済代行業者の口座に400万円を振り込み、不法に利益を得た疑いです。田口容疑者は容疑を認めているということです。

電子計算機使用詐欺罪とは、パソコンやATMなどの電子機器に、虚偽の情報や不正な指令を与えて不法の利益を得た場合に問われる罪です。10年以下の懲役と定められています。

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今回逮捕に至った経緯について、若狭勝弁護士に話を伺いました。
「逃走や証拠隠滅の恐れも考えての判断。国民の注目もあるため、起訴されることは間違いない」、それだけ証拠を固めている中での逮捕になったのであろうと話しています。

今後の捜査のポイントは、
▼400万円以外の金についても捜査し、刑事責任を問う
▼スマホの履歴から、指南役など共犯者がいるかどうか

こういったところも視野に入っていくであろうと若狭弁護士は話しています。

ホラン千秋キャスター:
森永さんは今回の件について、最も重要なポイントだと思われたのはどういった点でしょうか?

経済アナリスト 森永卓郎氏:
4630万円返してくれと町役場の職員が言ったときに、なぜ口座を封鎖しなかったのかなと。おそらく法律でそういう枠組みがないからなんだと思うんですけど。

11年前に私の父が亡くなって、死亡届出した瞬間に預金口座は勝手に封鎖されたんですよ。私は法律の専門家じゃないですけど、人が亡くなると封鎖できるのだから、口座を止めればこんなひどいことは起こらなかったのではないかなと私は思ってしまうんですけどね。

ホランキャスター:
そのあたりの対策を今後どうしていくかということですよね。

■1日複数回の出金 公開された出入金記録

井上キャスター:
新たに公開されたのが、田口容疑者の口座の出入金記録です。

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元々町から誤って4630万円の入金がなされたのが4月8日のことです。その当日にデビット決済を行っています。1日空けて4月10日にデビット決済。A社に120万円強を出金しています。

その後4月11日には、A社に6回にわたって出金しています。

4月12日に、L社・M社という違う会社に1回ずつ出金。今度は4月13日、A社に2回。4月14日に1回。4月15日が4回。この4月15日というのは、町がミスで「ある人物に入金してしまった」と公表した日です。

その翌日、A社に2回、4月17日には1日で6回出金しています。4月18日ではA社に5回送っている。

ですので、町が公表してから「これは時間がない、早く全部使い切りたい」ということで立て続けに出金したということも考えられなくはない状況です。

A社への出金が端数になっているのは、1万ドル、ドル建てによるレートで少し金額が変動しているのではないかと言われています。

■専門家が指摘する”3つの抜け道”

井上キャスター:
ではこれを取り戻すことができるのか。元は税金ですから、返してもらわなければ困るというところなんですが、阿武町の花田憲彦町長は「本人は全部使用したと言っているが、にわかに信じられない。いろんな形でどこかにまだまだ残っている可能性はあるんじゃないかなと思います」と話しています。

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確かに出金はしているけれども、それぞれ預けているだけで、そこで使い果たしたのではなくてその場所に、A社ならA社に残っている可能性があるんじゃないかということを、町長は話しています。

ネットセキュリティに詳しい専門家、神戸大学大学院 森井昌克教授に話を伺うと「ネットカジノを利用していない可能性もある」と話していました。

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▼ネットカジノにチップとして残している可能性
▼ネットカジノを経由して別の場所に移し替えた可能性
▼暗号資産に変えて購入している可能性

などを指摘しています。

海外のインターネットサイトだと、本当に取り戻すことができるのでしょうか。

若狭弁護士は「ネットカジノのサイトにお金があれば取り返せる可能性はあるが、それには容疑者の協力が必要」と話しています。

協力が得られない場合
▼強制的に家宅捜索などでサイトのパスワードなどを突き止める必要がある
▼海外の警察に捜査を依頼すると、半年〜1年かかる

海外の警察と日本の警察はそこまで協力し得るのか、そういったところもハードルになりそうだと若狭弁護士は指摘しています。

ホランキャスター:
A社に大金が渡っているけれども、その先というのは「本当に使ったのか」「そこにあるのか」「違うところに行ったのか」というのはわからないわけですから、その先の捜査というのは気になりますよね。

森永氏:
田口容疑者は元々ほとんどお金を持っていなかった人なので、そんな暗号資産とかの取引に詳しかったとはとても思えないんですよ。だから、協力とか指南した人っていうのがいるんじゃないかと私も思っていて、それはメールやLINEなどのやりとりを調べればわかるはずなので、まず誰が関与しているのか。

それから、警察は取引業者がどこかはわかるわけですよね。そこもちゃんと調べて、資金の流れがどうなっていて、誰が知恵をつけたのかというのをまず解明すべきだと思うんですけどね。

ホランキャスター:
本当に1人で全部やったという可能性もまだあるわけですからね。

森永氏:
例えば、ホランさんが暗号資産の取引を今までしたことないのに、急遽、暗号資産を通じてお金を逃がしましょうっていうのを瞬時にできるかと考えると、すぐにはできないですよね。私は田口容疑者に知恵をつけた人がいるような気がして仕方がないんです。

井上キャスター:
このニュースが事件化されましたので、容疑者の話に終始してしまいますけど、発端となったのは町のミスで、やはり4000万円ほどの大金のチェック体制、新人の職員が1人でやってしまうっていうのはそこはどうなんだろうと。

森永氏:
そこはもちろん本当に責められるべきなんですけれども、でも人間って間違えちゃうことってあるんですよ。役場の職員には悪意はなかったんですね。田口容疑者は悪意があるので、私はいけないと思いますよ。

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