「ネット宅配型クリーニング」トラブル続発

インターネットで申し込み、宅配業者を利用して、衣類の受け渡しを行う「ネット宅配型クリーニング」の相談が急増している。クリーニング店の店舗数は減少 傾向で、国民生活センターなどに寄せられるクリーニングに関する相談も年々減ってきている中、ネット宅配型の相談件数は、平成21年度は17件だったのに 対し、26年度は1月31日時点で156件と9倍超に増加している。国民生活センターは、「店舗型との違いに留意し、事前に契約内容をよく確認してほし い」と注意を呼びかけている。

■「非対面」が一因

同センターなどに寄せられた相談事例をみると、消費者と事業者が直接対面しない「非対面式」の形態が原因となっているトラブルが目立つ。

静岡県の30代女性から昨年12月、「衣類を紛失した揚げ句、事業者の対応が悪い。どうしたらいいか」という相談が寄せられた。女性は7カ月前、コート やニットなど冬用衣類をまとめてクリーニングに出し、それらの長期保管を依頼。引っ越しにともない、送付先の変更を連絡したところ、事業者から「そもそも 衣類を宅配業者から受け取っていない」と言われたという。その後、事業者の調査で事業者自身が紛失したことが判明したが、「探す」と言うだけで、なかなか 連絡が来ないという。

ワンピースのクリーニングを依頼した東京都の40代女性は昨年11月、事業者から、ワンピースではなく「パーティードレス」と判断され、ワンピースのク リーニング代の5倍以上の金額を提示された。女性はキャンセルしたい旨を電話とメールで伝えたが、事業者は「検品の仕方はホームページに書いてある。申し 出は一切受け付けられない。キャンセルができないことも記載している」と回答。女性は納得ができなかったが、衣類は事業者の手元にあり、返却を求めても応 じてもらえず、クレジットカードで決済していたため、受け入れざるを得なかったという。

■ブランドのコートも「賠償は1万円」

賠償や苦情対応をめぐってトラブルになるケースも後を絶たない。

ブランド品のコートとスーツ6着、ジャケット1着のクリーニングを申し込んだ東京都の30代男性は昨年10月、業者から「ドライクリーニング不可のコー トをドライクリーニングしてしまった」と連絡を受けた。裏地に使われていた、布の端処理に使う「パイピングテープ」が剥がれたり、裏地の色が浸出して表地 へ色移りしたりしたとの報告があったが、「規約により補償上限は1万円」と言われたという。

また、カーディガンとベルトを紛失された東京都の50代女性からは25年12月、業者に問い合わせをしたいが、電話をすると、「メールで問い合わせるように」と録音テープが流れ、メールで問い合わせても返事がないという相談が寄せられた。

同センターは、消費者と事業者が対面して受け渡しが同時に行われ、衣類の点数や状態を相互に確認できる店舗型とは異なり、ネット宅配型は、事業者の確認 体制が不十分なことにより、紛失のトラブルが起きていると分析する。また、店舗型の場合、消費者は納得がいかなければ、その場で依頼をやめるという選択肢 があるが、ネット宅配型では事業者に衣類が届いてからトラブルになるため、交渉が難しくなると指摘する。

同センターは、利用する際は事前に契約内容や、トラブルが発生した際の事業者の連絡先、賠償基準の内容を十分に確認することが必要と注意を呼び掛けると ともに、「シミや汚れが気になる場合は写真を撮って事業者に伝えるなど、情報を共有しておくとよい」とアドバイスしている。

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