「ネット銀行」開業10年 円高時代の“財テク法”に

インターネット上に口座をつくり、安い手数料で振り込みや外貨購入などができる「ネット銀行」が開業して10年。ネットの普及とともに、銀行の種類やサービス、利用者も拡大し、口座数は1000万に手が届こうとしている。最近では、円高時代の“財テク法”として、外貨預金口座を開く人も増加。携帯で外貨を即時購入できるなど、ネットならではのサービスが人気だ。(道丸摩耶)
 「口座数は10年で215万以上に増えた。まだまだ伸びしろがある」。ネット銀行の将来性についてこう語るのは、平成12年10月に日本初のネット銀行として開業したジャパンネット銀行(東京都新宿区)。「開業時は一般家庭にネットがあまり普及していなかった時期。13年にヤフーオークションの顧客が利用できるオフィシャルバンクに認定されたことや、15年から競艇や競馬などの公営競技と提携したことで、大きく利用者が増えた」
 24時間落札できるネットオークションでは深夜でも出品者に代金の振り込みができ、土日に開催されることが多い公営競技でも休日に入出金や振り込みができるネット銀行は利便性が高い。
 ◆為替差益狙う
 今では、ネット専業銀行として、5行が参入。ネットになじんでいる若者や外貨預金などで資産を運用する中高年を中心に、口座数も800万を超えた。
 ネット銀行のサービスで最近注目されているのは、外貨預金やFXなど、“為替差益”を狙った金融商品だ。
 ソニー銀行(千代田区)は、預かり資産約1兆6130億円(6月末現在)のうち約20%(3279億円)が外貨預金だ。
 「円高が続き、8月は特に外貨預金口座の開設が増えた。為替介入があった日は活発に売り注文が出たようです」と担当者。売買手数料を安くするキャンペーンなども好評だという。
 ネット銀行の顧客は都市銀行など複数の口座を持っている人が多い。そのため、同行は20年3月から、複数の金融機関の口座やクレジットカードの利用履歴、マイレージやポイントなどが一元管理できるwebツール「人生通帳」を開始。登録すれば、銀行の入出金記録だけでなく、クレジットカードを使用した店の種類や公共料金の引落日などがカレンダーの画面で一覧できる。
 ◆携帯に特化も
 一方、携帯に特化したサービスで注目を集めているのが「じぶん銀行」(新宿区)だ。同行に口座を持つau携帯の利用者間なら、相手の電話番号だけで振り込みが可能。外貨取引でも、あらかじめ指定した為替レートになると携帯にメールが届くなどのサービスがある。「開業から2年弱で100万口座を獲得した。ネット銀行では最速」(同行)と利用者を急速に増やしている。
 まずは仕組みを理解してもらう時代から、サービスで比較される時代へ。ネット銀行は10年でしっかり生活に根付いているようだ。
【用語解説】ネット銀行 
 店舗を持たず、インターネット上で24時間、現金の振り込みなどが行える銀行。ネット専業の銀行の場合、入出金には既存銀行やコンビニのATMが使われる。店舗やATMの設置・管理費、人件費が節約でき、その分手数料を安くしたり、金利を高くできる。

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