「ハム1枚15万円」の「培養肉」、安全性確認へ厚生省が年度内に研究班…将来の産業化に備え

家畜の生きた細胞を培養して本物に近い肉質にした「培養肉」について、厚生労働省は規制の是非を検討するため、専門家の研究班を年度内に設置する方針を固めた。培養肉は人口増加による食料危機への対応策として注目を集めている。同省は、培養工程などに健康に悪影響を与えるリスクがないか洗い出すことで、将来の産業化に備えたい考えだ。 【イラスト解説】培養肉の製造工程、最後は食感を再現

厚生労働省

 培養肉は清潔な室内で肉の細胞を培養して増やし、結合させた食品だ。世界的な食肉需要の増加によるたんぱく源不足を解決する手段として期待されている。量産化には「ハム1枚15万円」とも言われるコストを大幅に下げる必要がある。大豆などの植物由来の原料を使った「代替肉」とは異なる。

 国内で流通する食肉は、食品衛生法で製造や加工、販売する方法を定めている。厚労省は「培養肉は同法の食肉の分類には当たらない」との認識で、メーカーなどが守るルールが不明確な状態だ。研究班は培養時に有害物質の混入が起きる可能性や、起きた場合の影響などの知見を集める。同省は研究班の報告を受け、海外の規制のあり方なども踏まえた上、必要に応じて専門家らで作る審議会で安全性を確保する方法を議論する。

 米国では米食品医薬品局(FDA)と農務省が培養肉を所管することが2019年に決まり、規制の枠組み作りが進められている。シンガポールは20年、米国企業が開発した培養鶏肉の販売を許可した。

 国内では日清食品ホールディングス(東京)と東京大のチームが牛由来の培養肉を開発中で、今年、日本初の「食べられる」培養肉の作製に成功した。チームは25年までに「厚さ2センチ、重さ100グラム」の培養肉を作り、その後の量産を目指す。企業や大学で作る「細胞農業研究会」も品質管理基準などの提言を作成中だ。

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