【AFP=時事】水から顔を出して、プールの横にいる訓練士の言葉を聴き、「ハロー」と大きく発っしているのは、シャチの「ウィキー(Wikie)」だ。完璧ではないが、驚くほど明瞭に何と言ったのか分かる。
約3000万年前に生息していた、歯がなく、ひげを生やした小型のイルカの想像図
これはシャチにヒトの言葉をまねさせる初めての科学的デモンストレーションだ。ウィキーは他にも訓練士の名前の「エイミー」や、「バイバイ」、「ワンツースリー」といった言葉を発することができる。
「オウムみたいに完璧なまねを期待していたわけではなかった」と、スペインのマドリード・コンプルテンセ大学(Complutense University of Madrid)の研究員、ホセ・アブラムソン(Jose Abramson)氏は語る。研究の論文は31日、英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に掲載された。
新しく接する音をシャチがまねる能力を観察するためにアブラムソン氏ら研究チームが採用したのは、南仏アンティーブ(Antibes)にあるテーマパーク「マリンランド(Marineland)」のシャチ、ウィキーだ。シャチの発声構造はヒトと「全く異なる」にもかかわらず、6つの言葉を使ったこれまでの実験のうちいくつかで、ウィキーは「非常に質の高いまね」に成功した。
まず実験の一環としてウィキーには、「方言」を使う異なる種類のシャチたちが発する、それまで聞いたことのない音を聞かせ、それをまねさせてから、ヒトの言葉をまねさせる実験へ移った。
実験の録音の中で、ウィキーは何度か「ハロー」と言おうと試みている。そして、常に2つの音節の真ん中でハロー(hello)の「L」に似た音を出し、最後に「O」に似た音を出していた。
最も近い音が出たのは、低く喉の奥から出たようなな音で、アニメに登場するような悪魔が「ハロー」と言うような音だった。
またウィキーが不気味にささやくように出した「エイミー」という音は、驚くほどヒトが発音したようだった。一方で「ワンツースリー」と言うのには苦労したようだ。
アブラムソン氏によれば、シャチがヒトの言葉とそっくりな音を出すことができたとしても、その言葉の意味を理解しているわけではないという。実験では文脈やそれぞれの言葉の意味付けは一切行われなかった。それでも、結果はシャチが非常に賢い動物であることを示すものだと同氏は述べた。動物はまねることができれば仲間から学ぶことができるので、まねる能力は知性のしるしだという。【翻訳編集】 AFPBB News