パイナップルの旬は初夏? 価格も安定・通年食べられる果物
パイナップルの旬は5~7月。日本では初夏の時期ですが、原産は熱帯アメリカですので、一年中温かい地域では栽培可能。日本で栽培できるのは、温室を除けばほぼ沖縄県だけですが、熱帯の植物ですから、一年中、世界のどこかの国では旬を迎えており、輸入品であれば一年を通じて、ほぼ一定価格で購入できます。
余談ですが、8月1日はJA沖縄が制定したパインの日、8月17日はパイナップル缶の大手メーカーであるドールが制定したパイナップルの日だそうです。
パイナップルが野菜か果物か迷う方がいるようですが、これは一見「木」に実っているように見えるパイナップルが、実は「多年草」という草に実っているという知識があるからでしょう。「木に実るものが果物」という認識だと、確かに迷ってしまいそうです。原点に返り、野菜と果物の定義を調べてみると、
・野菜
園芸の世界では、主に副食として利用する草本性食用植物の総称
・果樹
農林水産省では、2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするもの(※農林水産省は野菜の定義の掲載はなし)
と定義されています。実際、特産果樹生産動態等調査やJA沖縄などでも果物のページに「パイナップル」の文字が見られますので、「果物」と考えてよいのではないかと思います。
パイナップルのカロリー・主な栄養素……舌が痛むのはブロメラインが原因
パイナップルは果物ですので、特筆すべきは食物繊維とビタミンが豊富である点です。特に、ビタミンC(100gあたり35mg)とマンガン(100gあたり1.33mg)の多さが目を引きます。さらに食物繊維は100gあたり1.2gとなかなかの量です。
また、パイナップルをたくさん食べて舌がピリピリしたことがある人もいると思いますが、これはパイナップルに含まれているたんぱく分解酵素である「ブロメライン」の働きにより、舌のタンパク質が分解されるため。そのため痛みや痺れを感じますが、一時的なものなのでしばらくすれば治ります。ご心配なく。
また、韓国では「パイナップル酢」が「美酢(ミチョ)」と呼ばれて一時流行したようです。実は先述のパイナップルのタンパク質分解酵素「ブロメライン」は、塗り薬(軟膏)として褥瘡(床ずれ)の壊死組織除去剤として利用されています。壊死組織を除去することで、新しい皮膚組織が成長するのを促すのです。
この効果と酢の効果を利用してきれいになろうという作戦なのでしょう。しかも、好みの酢に生パイナップルを切ったものを漬け込むだけですから、自宅で作るのも簡単です。韓国のような温かい国なら、パイナップルもさほど高価ではないと思われますので、流行るのもわかる気がします。
しかし、筆者が個人的に思うのは「酵素」が働くには最適pHと最適温度があります。軟膏の場合は、それらの条件がうまく整うように調整して販売されているので、壊死組織を除去することができます。ところが、自宅で「酢」に漬けるということは、pHが酸性に傾き、最適pHから外れます。
漬け込む時間にもよると思いますが、「パイナップル酢」は酵素の死がい(普通のタンパク質です。食べても害はありません)を摂取しているだけだと思います。
ただし、ヨーグルトに多く含まれる「乳酸菌」のように、死菌(この場合は、死酵素? そんな言い方は聞いたことがありませんが……)であっても腸に届けば健康効果が期待できる……といったものかもしれませんので、ここでは全否定はせず「今後の研究に期待しましょう」と言っておきます。
パイナップルはどれくらい日持ちする? 家庭での冷凍・冷蔵の目安・注意点
パイナップルはホールのままであれば、室温保存が可能ですが、甘味が強いので、芳香がするようになったら、すぐに傷んでしまいます。いい香りがするなと思ったら、すぐに切って1~2日のうちには食べきるのがベターです。切ったら冷蔵保存しましょう。
冷蔵する場合は、におい移りがしないように、カットした断面にはぴっちりラップをかけておくほうが長持ちしますし、風味も落ちにくいです。
冷凍する場合も、1回で食べきれる分ずつに分けてぴっちりラップをかけて、保存してください。
冷凍するときのパイナップルの状態や冷凍庫の性能などにもよりますが、2週間程度が限界かと思います(それ以上放置すると霜がついてしまい、風味が損なわれてしまうと思います。筆者の場合はその前に食べきってしまうので、どのくらいが冷凍の限界か実感としてはよくわかりませんが……(笑))。
パイナップルで舌がピリピリしない方法……加熱するか缶詰を
先述の通り、パイナップルで舌がピリピリと痛むのは、パイナップルのタンパク質分解酵素「ブロメライン」が舌のタンパク質を分解するのが原因です。避けたいなら生のパイナップルを食べないのが一番ですが(笑)、おいしいですからね。
ヨーグルトや牛乳を飲むと治るといった説もありますが、生のパイナップルでピリピリしない方法は難しいです。しばらく待っていれば治るので、待つしかありません。
ピリピリと痛むのを避けたいなら、酢豚などはその典型ですがパイナップルを加熱して食べるか、缶詰のパイナップルを食べるようにしましょう。缶詰のパイナップルは切った後砂糖漬けにされているので、舌をピリピリさせる酵素は壊れています。
また、ここではパイナップルについてお話ししていますが、南国フルーツはタンパク質分解酵素を持っているものが多いです。南国フルーツで舌がピリピリするときは大体酵素のせいですので、びっくりしないでくださいね。
お手頃でビタミン豊富なパイナップル、缶詰の備蓄もおすすめ
パイナップルはビタミン類を豊富に含むお手頃価格の果物です。日本ではあまり日常的に食べる果物ではなく、酵素によるピリピリ感から量は食べられないと思いますが、他のお手頃価格の果物が手に入らない時期などは便利な果物だと思います。缶詰を災害時用に保存しておくのもよいかもしれませんね。
■参考サイト
・園芸の基本(住友化学園芸)
・果樹のページ(農林水産省)
・特産果樹生産動態等調査(農林水産省)
・パイナップル(パインアップル):主な品種や産地と旬の時期(旬の食材百科)
平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在