「ブレークだっぺ」茨城の逆襲 “魅力度”4年連続最下位の宣伝効果は100億円

魅力度ランキングで4年連続最下位を逆手に「これからブレークだっぺ」と茨城県が逆襲を開始した。最下位のおかげでテレビで取り上げられ、なんとPR効果は100億円。サーフィンスポットの穴場、大洗ではキムタクの姿もあったとか。茨城の魅力に迫る。

「ブランド総合研究所」(東京)が昨秋、発表した47都道府県魅力度ランキングで4年連続最下位に沈んだ茨城県。

確かに読者には水戸黄門やヤンキー、納豆などのイメージしかないかもしれない。さぞ、茨城県民は落ち込んでいると思いきや、悲愴感はない。

住民の間では「最下位のおかげで逆に注目された」との声が強い。

実際、魅力度上昇率では全国1位。

「これからブレークだべ。頑張っぺ、茨城」を合言葉に全国区進出へ向け、茨城の逆襲が始まっている。

「別にショックはありません。外から見る人は茨城のことをよくわからない人が多いんだと思います。逆に脚光を浴びてメディア露出が増えて、絶大なPR効果があり、ありがたいぐらいですよ」

こう語るのは茨城県広報監の取出新吾氏。取出氏は米大手IT「インテル」出身の元ビジネスマン。2015年4月に広報監に転じて以来、茨城のイメージアップ戦略の司令塔として全国に茨城を発信している。魅力度の低さの原因をこう分析する。
「採算ベースで行動する外資にいましたから、県庁に勤め始めた当初は文化の違いを実感しました。押し出しの弱い、おっとりとした県民性と、東京から近いから農産物でも何でも買ってもらえる甘さがあり、積極的に茨城を知ってもらう手立てを打ってこなかった」

そこで、県が打ち出したのが吉本芸人の渡辺直美と綾部祐二を起用したコマーシャル戦術である。

「なめんなよ いばらき県」(13年)、「いばらきは、宇宙である。」(14年)、「のびしろ日本一。いばらき県」(15、16年)

こうしたキャッチフレーズを宣伝文句にしたところ、ネットや口コミなどで話題になり、「広告換算で宣伝効果は100億円に達した」(取出氏)という。

あまり知られていないが茨城県は唯一、地上波民放テレビ局がない。このため、12年10月からインターネット動画サイト「いばキラTV」をスタート。

16年には総動画本数、総再生回数、チャンネル登録者数の3部門で2位以下の都道府県に2倍以上の差をつけて日本一となった。ちなみに、住宅敷地面積(1住宅当たり)、耕地面積割合、工場立地面積、ビール生産量のほか、メロン、レンコンなどの産出量も日本一である。

偕楽園(水戸市)は日本三名園、袋田の滝(大子町)は日本三名瀑、土浦全国花火競技大会は日本三大花火大会にそれぞれ数えられ、見どころは数多いのだ。

県内随一の老舗料亭「山口楼」(水戸市など)の客層の8割は県外から。専務の山口晃平氏は語る。

「なまじ東京から近いので、北海道や京都のような観光地としてのイメージ付けの資本投下をJR東日本などの民間大手がしないので、茨城のPRができてなかった。しかし、ヤンキーでも一つの文化といっていいし、キツイ訛りも個性です。自然、食べ物、観光など住んでみないと良さはわからないのではないか」

茨城弁普及運動に励む傍ら、『いばらぎじゃなくていばらき』などの著作がある青木智也氏はこう胸を張った。

「以前は県民自身が茨城で生まれ育っていく中で、東京にはかなわない、脇役なんだという意識があった。しかし、だんだんとそうじゃないんだという理解が進み、そこそこ、ほどほどで田舎すぎず、都会すぎないちょうどいいバランスの県という意識、誇りが高まってきた」と指摘し、「車も走りやすいし、家も広い、雪も降らない。スキー場以外は何でもある。僕は勝手に都田舎(とかいなか)と呼んでます。ピンチをチャンスにしたい。本当の魅力を発信したいですね」。

4月からは追い風も吹く。次期NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の舞台が茨城県北西部で、ヒロイン役の人気女優、有村架純が思いっきり、「んだんだ」(そうだという意味)という茨城弁をテレビ画面から連発する。

前出の取出氏は茨城県の立ち位置をこう語る。

「いつか行ってみたい銀座レカン(銀座のフレンチレストラン)ではなく、茨城は町の普段使っている定食屋さんのイメージでいい。SMAPの『世界に一つだけの花』にあるように、あえてナンバーワンを目指さなくていいんです」

前出の青木氏もブレークへの期待をこう語る。

「『いい、やんべ』という茨城弁が好きなんです。いいあんばいという意味。茨城はそこそこ、ちょうどいい住み心地のいい場所です。ポテンシャルはすごくあると思う。近いうち、きっと大ブレークしますよ」

長時間労働で自殺に追い込まれるような殺伐とした大都会とは一味違う茨城の魅力が新発見される日は近いかも?(本誌・村上新太郎)

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