「プレ金」1年、規模縮小も サービス・小売業界「客は主婦層」見込み外れぼやき

鳴り物入りで始まった「プレ金」が23日、丸1年を迎えるが、消費拡大に期待を寄せたサービス・小売業界への恩恵は限定的だ。早帰りの実施自体が広がっておらず、各社から「息の長い取り組みが必要」との声も上がる。

1月の最終金曜日だった26日。東京・赤坂の居酒屋「串カツ田中」には、明るいうちからスーツ姿の男女が次々吸い込まれた。串カツ田中のチェーンは通常午後5時の開店を3時に早め、串カツ全品を税抜100円に値下げするキャンペーンを実施。プレ金当日の全175店の売上高は、通常の金曜比で平均10~20%増と好調だ。

「外食は気軽に楽しめるレジャーの一種。ディナー業態と比べれば、家族の都合が合わなくても会社帰りに入れる居酒屋はプレ金の追い風が強い」と、みずほ証券の朝枝英也アナリストは解説する。

一方で、取り組みを縮小する動きも少なくない。京王プラザホテル(東京都新宿区)は、最上級フロアの宿泊客にシャンパンを無料サービスするプランを始めたが、利用が8カ月で6件にとどまり、昨年9月分で終了。日本旅行も、週末のレジャー需要を当て込んだ割引クーポンの配布が終わるとともに、宿泊プランの利用は前年並みに戻った。

イオンの中核子会社イオンリテールは当初、プレ金に合わせ約350の総合スーパー全店でタイムセールを行ったが、毎月20、30日のセールと日程が近いこともあり、続けているのは東北など一部地域のみだ。

大丸松坂屋百貨店を展開するJ.フロントリテイリングの山本良一社長は「ハロウィーンは何十年もかかって定着した。地道に続けることが大事」と力説するが、関係者からは「プレ金の催事も、来店客は主婦層が目立つ」と、見込み外れをぼやく声も上がる。

市場調査会社インテージが2月、会社員ら3251人に行った調査では、この1年間でプレ金に一度でも早帰りできた人は8.3%止まり。「そもそも月末の金曜日は業務が多く、早帰りは難しい」(金融業界関係者)との声も根強い。

日本総合研究所の小方尚子主任研究員は「余暇が増えても、所得が増えなければ、ない袖は振れない」と指摘。「サービス提供側の視点では、一斉に休んでもらえれば需要をつかみやすい。しかし本当に目指すべきは、融通し合って休みたいときに休める社会風土ではないか」と提言した。(山沢義徳、佐久間修志)

タイトルとURLをコピーしました