「メンタル休職者は民間の3倍」公務員になれば「人生バラ色」と考える人の勘違い

とある人気職業ランキングでは、GoogleやAppleなど並み居る人気企業を抑えて、1位&2位に輝いた「公務員」。安定や社会貢献度に魅力を感じる人が多いようだが、一方で「官僚のメンタル休職者は民間の3倍」というデータも。

【ランキング】公務員がGoogleを超えた!「人気職業ベスト10」

 公務員になれば本当に「安定な人生」がつかめるのか? 30年以上公務員として働いた著作家の秋田将人氏の新刊『公務員になりたい! ベテラン公務員が教えるお役所就職ガイド』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)


GoogleやAppleを抑えて「人気企業の1位・2位」に輝いた公務員。安定を求める人たちに人気のようだが、実際はそこまで甘いものではなかった…。写真はイメージです ©getty

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人気職業のNo.1は「地方公務員」

 公務員は、現在でも人気の職業です。

 法人会員向けに与信管理サービスを提供するリスクモンスター社が発表した「大学1、2年生が就職したいと思う企業・業種ランキング」(2022年7月調査)では、以下のようなランキングになっています。

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1位:地方公務員
2位:国家公務員
3位:グーグル(Google)
4位:任天堂
5位:アップル(Apple)
6位:ソニー・ミュージックエンタテインメント
7位:ソニーグループ
8位:明治
9位:資生堂
10位:味の素
10位:楽天グループ

 なんと公務員がワンツーフィニッシュです。また、よくある「親が子どもに就かせたい職業ランキング」でも公務員はトップになっています。

 地方公務員を30年以上経験してきた自分としては、これはうれしいことでもありますが、同時に少し違和感も覚えます。なぜなら、「本当に、公務員のことを理解しているのかな」と思うからです。

メンタル休職者は「民間の3倍」

 多くの人が、公務員という職業に期待するものは、何でしょうか。「マイナビ2023年卒公務員イメージ調査」によると、「公務員になりたいと思う理由」の上位3位は「安定している」「休日や福利厚生が充実している」「社会的貢献度が高い」です。

 いずれも世間一般に浸透しているイメージです。もちろん間違いとは言いませんが、そうした捉え方だけで公務員を志望するのは、やや危険な気がします。なぜなら、「全自治体対象、公務員のメンタル調査 休職者増で総務省」(日本経済新聞 2021年8月10日)によれば、「地方公務員の休職者が増加傾向で、多くは精神疾患が原因」とあり、また官僚のメンタル休職者は民間の3倍いるとも言われているからです。

 こうした現状を踏まえると、やはり公務員の実態を理解せずに、先に挙げたような世間一般のイメージだけを捉えて公務員になってしまったことが、原因の1つであると思わざるを得ないのです。

 それは、公務員になった人にとっても、社会にとっても損失です。場合によっては、その人の人生をダメにしてしまうかもしれません。そうなっては、何のために公務員になったのかわかりませんし、せっかくの人生をムダにしてしまいます。そのようなことがないように、皆さんに公務員の実態をお伝えしたいと思い、まとめたのが本書です。

時には「モンスタークレーマー」と対峙することも…

 皆さんもご承知のように「税金ドロボー」と揶揄されるなど、いつの時代も公務員は世間から批判の対象です。そして、実際に役所に、モンスタークレーマーが訪れ、長時間にわたって職員に文句を言い続けます。また、施設建設などの住民説明会では、心ない言葉を浴びせられることもあります。

 人気第1位の地方公務員、特に市区町村である基礎自治体は住民に最も身近な行政ですので、そうした住民から逃れることはできません。そのため、そうしたクレーム対応のせいでメンタルを壊してしまい、休職に追い込まれる職員は少なくないのです。地方公務員である以上、住民対応を一度も経験しない公務員はいないでしょう。

 また、公務員も組織人の一人ですから、様々な組織のルールや制約に縛られることになります。民間企業と同様に、職場の人間関係に悩んだり、足の引っ張り合いがあったりしますし、公務員特有のお役所仕事で、疑問に思うこともあります。そうしたことが嫌になって退職してしまう人もいるくらいです。

 皆さんは、こうした実態を知っても、公務員を志望するでしょうか。

 ただ、私自身の経験から言えば、「公務員になって良かった」と今でも思っています。しかし、それは公務員が、先に挙げた「安定している」「休日や福利厚生が充実している」「社会的貢献度が高い」だけのバラ色の世界だからではありません。

 私も激しい住民との対立を経験してきましたが、それを乗り越えた時に、住民と理解し合えた瞬間があったからです。住民と公務員が「何とか、このまちを良くしたい」という思いで、口角泡を飛ばして議論を行い、時にぶつかり合い、時に冷え切った関係に陥ったとしても、その先に「お互いがわかり合えた」という貴重な体験ができたからです。そうしたことが、まさに公務員としてのやりがいだったりするのです。

「記憶喪失のホームレス」を装うケースも…役所をだましてまで「生活保護」を受給しようとするヤバい人たち へ続く

(秋田 将人/Webオリジナル(外部転載))

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