「ルフィの闇名簿」の実態 広域強盗事件で襲撃先の選定に使用 金融資産から病院のカルテまで…入手経路は?

全国で相次ぐ広域強盗事件では、指示役の「ルフィ」ら特殊詐欺グループの手口が応用されている。襲撃先を選ぶ際に使われていたとみられるのが、資産や納税状況など資産家らの個人情報を列挙した「闇名簿」だ。特に日本人のクレジット情報は高価で「1件1万円」で売買されることもあるという。

渡辺優樹容疑者(38)ら指示役の可能性がある4人は警視庁が特殊詐欺事件に絡む窃盗容疑で逮捕。10日には渡辺容疑者とグループの幹部とされる小島智信容疑者(45)を送検した。

東京都中野区で昨年12月に約3000万円が奪われた強盗事件では、指示役としてルフィや「キム」らの関与が疑われている。襲撃の数日前に住所や氏名、資産、利用金融機関などを探るアポ電(予兆電話)があったといい、特殊詐欺の手口と類似している。

警察庁によると、2022年の予兆電話の件数は12万701件(前年比20・1%増)だった。

悪徳商法や詐欺事件に詳しいジャーナリストの多田文明氏は「分業制の詐欺集団の中には、『かけ子』にリストを提供する〝闇の名簿屋〟が存在する」と語る。闇名簿は氏名や住所、生年月日、家族構成のほか、貯金額、不動産の購入履歴などの記載もあるという。

問題は情報の流出ルートだ。かつては高額納税者公示制度が存在したほか、地主や資産家情報を記載した書籍も市販されており、図書館などで閲覧できるものもある。

不正な持ち出しのケースもある。昨年11月に特殊詐欺の受け子として摘発した消防士の男は、消防署に保管していた単身世帯の高齢者がリスト化された名簿の複製を持ち出していた。

2015年の詐欺未遂事件では、犯行グループが活動していたマンションの一室から高校や大学約1000校分の卒業名簿を押収。18年に大阪市内の民泊を拠点とした詐欺事件では、押収されたパソコンに健康食品販売関連の約5万7000人分の名簿が残っていた。

多田氏によると、「闇名簿」の中には、金融資産や、宝飾品や自動車、不動産など高価な物品の購入歴や投資詐欺の被害者リスト、病院のカルテまで存在するという。

「証券会社や保険会社、不動産会社など金融関係者から漏れている可能性もある。カルテは病歴を含む家族構成や、緊急連絡先も表記されており、家族や警察、病院関係者にもなりすますことができる。内部の人間が持ち出したとしか考えられない情報もある」

名簿の精度を高める「名寄せ」と呼ばれるプロセスもあるという。ルフィらによる一連の強盗事件について多田氏は、「さまざまな情報を組み合わせ、資産や高齢者の存在、家族構成など『付加価値』の高まった名簿を入手したのではないか。世界でも日本のクレジット情報は高価で、1件平均4000円程度、高いもので1万円にもなる調査もある」と語る。

一度アポ電を入れることで名簿の情報をアップデートする手口もある。多田氏は「ターゲットを選ぶうえで、高齢者が日中1人になるかどうかや、やさしい人、だまされやすそうな人など、人格も考慮される可能性もある」と警鐘を鳴らした。

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