東日本大震災によって存続が危ぶまれていた「ワカメ交流」を絶やすまいと、宮城県南三陸町の県漁協歌津支所の組合員らがこのほど、昨秋に種付けしたワカメ約1トンを、友好町の山形県庄内町で販売した。
ワカメ交流の実行委員長及川隆喜さん(60)らメンバー8人が、前日に収穫したワカメをトラックに満載し、庄内町役場前に到着。約3キロ入りの1袋が300円で、10分足らずで約300袋が売り切れた。
両町は、1999年に合併前の旧歌津町と旧立川町が盟約を結んで以来の友好町。住民が相互訪問する中、伊里前湾で11月にワカメを種付けし、翌年2月に刈り取る漁業体験交流を続けてきた。震災後は、庄内町が町を挙げて南三陸町を支援し、義援金約4000万円を送った。
津波で伊里前漁港は壊滅し、交流事業を支えた組合員1人が亡くなった。自宅が高台にあり、養殖用ロープを流されずに済んだ及川さんは、昨年11月、資材が不足する中で「今年も庄内町のために」と種付けを思い立ったという。
「ずっと支援してもらった人たちに、ワカメを届けられてよかった」と及川さん。
庄内町の原田真樹町長は「大変な状況の中、わざわざ庄内町のためにワカメを育ててくれ、絆がさらに深まった。(友好関係が)南三陸町の復興の一助になるといい」と話した。