観光シンボル「一目千本桜」の植樹から101年目を迎えた宮城県大河原町。記念事業で、町の独自品種にしようと育てた桜が今月、新園芸品種として認定を受けた。公募により名称は「おおがわら千年桜」と決まり、桜を精神的なよりどころにする住民が多い町は、新たな100年に向けスタートを切った。
(大河原支局・伊藤恭道)
樹木医・尾形政幸さん交配「愛される木に」
新品種は町委嘱の樹木医尾形政幸さん(67)が、教員として町内の柴田農林高に勤務していた2006年、多雪地帯の山地に自生するというオオミネザクラを母体に、明治時代に仙台で生まれた希少品種センダイヨシノを掛け合わせ独自に交配した。
薄紅色の花びらや花付きの良さが特徴で、病害虫に強い。樹高は約4メートルと小ぶりで、巨木にならないため一般住宅の庭や狭いスペースでの植栽にも適する。開花時期はソメイヨシノより数日早いという。
認定作業を担ったのは、公益財団法人「日本花の会」(東京)の主幹研究員を務め、現在は品種認定の第一人者として知られる田中秀明さん(65)=茨城県在住=。桜を育てる尾形さん方の敷地内で2日、最終審査に当たった。花の数や樹形、葉や根など約100項目にわたり調査し認定した。
名称は今年1月に町が一般公募。集まった計451点から町長や有識者でつくる選考委員会が審査し、町在住の主婦宮沢美恵子さん(77)の案に決まった。
10年前、多賀城市から町に移住して美しい桜に魅了されたという宮沢さんは「自治体名を冠し大河原が誇る桜を全国に知ってほしい。末永く桜と笑顔が咲く町になってほしいと願いを込めた」と話した。
7日に白石川堤防であった植樹式には、町出身の実業家で私財を投じ桜1200本の苗木を植えた高山開治郎(1876~1942年)の孫で、千葉県の会社役員高山信行さん(60)も出席。関係者や住民らとともに計10本を植え、1世紀前の祖父同様に未来に桜の美をつないだ。
尾形さんと町は、これまでに「大河原紅桜」など複数品種を開発している。桜の開花時期は品種により異なる。多品種を植えればその分、長期間桜を楽しめることになる。尾形さんは「多様な桜で将来の人々に雄大な景色を見せたい。開治郎翁のソメイヨシノ、100周年に合わせて認定された『大河原紅桜』に続く愛される木になってほしい」と新品種への思いを語る。
新品種を広く周知するため、尾形さんと町は桜の育成と保護に関する経験や情報を共有する全国の団体「日本櫻学会」の会誌に寄稿する予定だ。