「一目千本桜みそ」首都圏へ 100周年式典から新たな縁生まれる 宮城・大河原

2019年に廃業した宮城県大河原町の「玉松味噌醤油(みそしょうゆ)」のブランドを継承した「東松島長寿味噌」(東松島市)が手がける復刻商品「玉松一目千本桜吟醸みそ」が今月、首都圏の鮮魚店などの店頭に並んだ。本紙記事が一目千本桜に思いを寄せる2人を結び、販売が実現した。(大河原支局・伊藤恭道)

廃業した醸造会社の元社長と並木植えた実業家の子孫、桜の木が結ぶ

 一目千本桜は、町出身の実業家高山開治郎(1876~1942年)が私財を投じて1200本の苗木を白石川沿いの堤防に植えたのが始まりで、今年で100周年を迎える。4月8日には開治郎の孫の高山信行さん(60)=千葉県柏市=らを招いた記念植樹が行われた。

 4月15日付の本紙記事は、鮮魚店をチェーン展開する北辰水産の社長を務める高山さんが、現金100万円とラベルに千本桜をあしらった自社製サバ水煮缶詰1200個を町に贈ったことも併せて紹介した。

 記事を読んだ玉松の元社長渡辺芳徳さん(80)=大河原町=は、高山さんの粋な行動に感心するとともに「魚の加工にみそを使うのではないか」とひらめいた。連絡先を探して、「駄目で元々」と千本桜みその購入を打診した。

 高山さんは「電話をもらって正直驚いたが、大河原をPRする使命を感じた」と快諾。加工用ではなく、店頭販売用に500グラム入りを130個仕入れた。玉松の味を知る県出身者らの引き合いもあり、売れ行きは好調で、引き続き取引を続けるという。

 玉松は1937年創業。主力だった千本桜みそは大豆と同量の米こうじを使った仙台みそ。じっくり熟成させ、ふくよかな甘さが特長だった。味にほれ込みブランドを引き継いだ長寿味噌の橋本孝一社長(75)が昨年復活させた。

 東松島市大塩の工場で製造する玉松ブランドの7商品は渡辺さんが監修し、認めた物だけを商品化。玉松の釜を使い、原料の配合や火入れ具合など玉松の製法を受け継ぐ。橋本さんは「渡辺さんの行動力で販路が広がった。頭が下がる」と感謝する。

 渡辺さんは「祖父から3代続いた会社は自分の代で畳んだが玉松は不滅だ。今後も世の中にアンテナを張って手伝うことが地域や先祖に対する自分の使命ではないか」と話す。

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