「中間管理職」の悲しきリアル 役員のコンパニオン扱い、部下の悪評…

アラフォー世代は、仕事の熟練度合いと「まだ若い人たちには負けない」という気力の充実で一番の働き盛りです。多くの企業では、このあたりで役職が上がって次のステップに進みます。中間管理職です。部下を監督・育成する立場となり、仕事も目の前の案件だけでなく、全体を見渡せることが求められます。

 会社に認められて出世し、新しいポジションを得たことでモチベーションは上がることでしょう。加えて、立場が上になれば、周囲からの理不尽な扱いは減るはず…と期待したいところですが、現実はなかなか甘くないようで、中間管理職には中間管理職の苦労がつきまといます。

 アラフォー世代を多く取材している筆者が、現場の生の声を拾ってみました。

■「仕事ぶりは行動で示そう」で失敗

 中堅企業で6人の部下を率いるAさん(41歳、男性)は口下手なことを自覚していて、それが部下に与える印象について懸念していました。黙っているとクールさによって人望を集めるような人がいますが、Aさんは黙っていると「何を考えているか分からない」と周りに不気味がられるタイプでした。

 中間管理職に就任したAさんは意気込み、「口下手はなかなか直らないから、仕事ぶりは行動で示そう」と、以前より一層仕事に精を出しました。

「不満や要望が上と下の両方向から来て、一つ問題を片付けたと思うとすぐ次の問題が出てくる。いや『これは大変だな』と」(Aさん)というように、Aさんは一応謙虚に構えていました。

 自分がしかるべきポジションに就いたら、部下の負担をなるべく減らしたいと考えていたAさんは、部下の仕事を引き取り、残業してそれを片付けるなどしていたのですが、「いつも残業しているのを周りが見て、『仕事が遅い』とうわさしていることを知り、『こんな職場辞めてやる!』と思ったことも何度か(笑)役職がついて残業代が出なくなったけど、それでも部下のためと思ってやっていたのにもかかわらずです」(Aさん)

 手伝ってもらった当の部下からは感謝されましたが、口下手でアピールが苦手なAさんの努力は、周囲からなかなか思うようには評価されなかったようです。

「昔から慕ってくれている後輩がいたのですが、彼の口から『Aさんももう会社側の人間だからなー』と冗談っぽく言われ、『そうか、そういうふうに見られているのだ』と初めて気付かされました」(Aさん)

 事実、立場的には後輩が指摘した通りで、Aさんは「少しでも頑張りを評価してもらいたいなら、きちんと社内でコミュニケーションを取りながらアピールしていかなければ」と奮起し、「自分が取り組んでいる仕事を部下にも周知する」「課の朝会で、お互いの仕事を把握しておく(比較的手のすいたその課の社員が、忙しい社員のサポートに回れるようになった)」「相手の目を見て話す」などの努力を続け、現在は少しずつ仕事ぶりが認められているようです。

■コンパニオンのように扱われ…

 ある大企業に勤めるBさん(37歳、女性)は20代の頃から営業として実績を上げ続け、注目されてきました。その働きぶりが認められ、社内的にはかなり早い段階で中間管理職へと出世することになります。

 役職が上がり、さらに上の役職の人と会う機会が増えました。「影も踏めない」くらい偉大だと思っていた役員の面々との飲み会にも、Bさんは頻繁に召集されるようになりました。出世レースで見れば順調といえます。役員からの覚えがめでたくなれば、引き上げてもらうことでさらに上のポストも見えてきます。

 しかし、Bさんの胸中はあまり晴れやかではないようです。

「同じ役職の中では比較的若く、女性ということもあって、役員との社内接待では希少価値の高いコンパニオンのような要員として重宝されているのかなと感じています。セクハラやパワハラがまだ残っている社風で、酔った役員が膝の上に乗ってきたり、愛人契約を迫ってきたりします。

20代の頃から、同様の機会はたまにあり、当時求められていたのは女性としての若さだったので、ただキャピキャピしていればよかったのですが、この年齢になると向こうの迫り方も妙にねっとりとしてきて、これが耐えがたい」(Bさん)

 もともと、Bさんは出世欲が強いわけでなく、目の前の数字を追っているうちにそれが結果となって出世に至ったそうで、現在は「進退を検討中」とのことです。

■中間管理職も捨てたものではない

 しかし、当然ながら、中間管理職はつらいことばかりではありません。

「自分の仕事や体調を気遣ってくれる部下の存在は、本当にありがたい。帰りの電車で思い出すと泣きそうになる(笑)」(Aさん)

「以前は自分個人の成績だけを考えてやってきたが、このポジションになってチーム全体での動きを意識することが多くなり、仕事の新しい楽しさを知った」(Bさん)

 立場が変われば、苦労や醍醐味(だいごみ)も変わります。上からも下からも直接挟まれている中間管理職は、“ならでは”の悲喜こもごものドラマも生まれます。醍醐味より苦労が多く感じられる場合は大変ですが、世の中には同様の苦境に立たされている中間管理職たる同志がいて、その存在が一筋の救いの光となることもあるでしょう。

 この記事が、中間管理職で奮闘する皆さんへのささやかなエールとなることを願います。

フリーライター 武藤弘樹

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