30年近く前に途絶えた亘理町の伝統芸能「亘理獅子舞」が形を変えて復活した。大分県日出町の男性が東日本大震災の復興支援で寄贈した一対の獅子頭を活用し、住民グループが新たな舞を創作。8日、亘理町中央公民館などで開かれたイベントで初披露した。
住民自治組織の亘理地区まちづくり協議会が企画する「日出・亘理 獅子舞プロジェクト」の一環。町内外から集まった78人が、1月から練習を重ねてきた。
メンバーは地場産品を販売する「伊達なわたりまるごとフェア」に出演。亘理伊達家の初代当主伊達成実をたたえる「成実ばやし」やすずめ踊りに合わせ、勇壮な舞を披露した。亘理小5年生95人や和太鼓グループとも共演した。
会場内も練り歩き、来場者の間近で踊った。あまりの迫力に泣きだす子どももいた。
獅子頭をかぶった飲食店経営高野義光さん(51)は「踊りきった充実感でいっぱい。この試みが復興につながればうれしい」とにっこり。リーダーの白石秀明さん(61)も「イベントや正月などで披露していきたい」と意気込む。
藩制時代から続いた亘理獅子舞は、後継者難で1980年代末に廃れた。震災後の2013年に、日出町の宮大工山村恭彦さん(78)が自作の獅子頭を亘理町に寄贈。これをきっかけに復興支援への感謝を表すため、復活させる機運が盛り上がった。
お披露目には山村さんも日出町から駆けつけた。命が吹き込まれた獅子頭の姿に「素晴らしい舞を見せてもらった。亘理の地で末永く続いてくれたらうれしい」とうれし涙を浮かべた。
フェアは亘理町などが主催。特産のイチゴの販売や試食などでにぎわった。