世界のスーパーコンピューターの性能ランキングで理化学研究所と富士通が共同開発した「京」が連覇を果たしたことは、日本のスパコンビジネスを飛躍させる大きな弾みとなる。
富士通は「京」の技術を活用した普及機を開発、14日には東京大学から50億円で初めて受注したと発表した。10年ぶりの輸出再開も視野に入れる。
スパコンはIBMなど米国勢が過半数のシェアを握る。1990年代には米国と並ぶ「スパコン大国」といわれながら徐々に存在感を失った日本にとって「世界一」の称号は大きい。富士通は200億円程度のスパコン事業を平成27年度に1千億円に増やす計画だ。
「京」は日本の産業競争力を取り戻す重要な使命も帯びる。「幅広い用途に使えるよう開発された」(山本正已富士通社長)ため、計算速度だけでなく理論性能に対する実行効率や、長時間動かしても故障しない安定性、消費電力の少なさも特長だ。
来年11月の本格稼働後は企業にも貸し出され創薬や新素材開発などに活用。自動車開発では衝突実験や走行試験を仮想空間で行えるようになり、開発をすべてコンピューター上で行える日が近づく。
世界では中国を含めて同等以上の性能を持つスパコンの開発プロジェクトがめじろ押しで、数年後には100倍の能力を持つ次世代機が登場すると予想されている。世界一の称号を無駄にしないためにも、目に見える結果が求められる。