「人間」啄木に迫る 遺稿など230点展示 仙台文学館

 歌集「一握の砂」などで知られる岩手県渋民村(現盛岡市玉山区)出身の歌人石川啄木(1886~1912年)の資料を集めた「石川啄木の世界~うたの原郷をたずねて」が、仙台市青葉区の仙台文学館で開かれている。開館15年を記念した特別展。作品や素顔を伝える遺稿など230点の展示を通して、啄木の生涯を多面的に浮かび上がらせている。
 啄木は貧困に苦しみ、北海道、東京と転居する中、折々の思いを短歌にした。詩や小説、評論も書いた。
 展示は「生涯」「詩歌の世界」など6部構成。盛岡中学時代の試験の答案や学友への書簡などからは、文学に熱中して成績が低迷する一方、友に向けてあふれるように言葉を紡ぐ感性豊かな少年像がうかがえる。
 歌稿ノート「暇ナ時」には、1908年に森鴎外宅の観潮楼歌会で詠んだ歌など652首が記載されている。行間の書き込みからは、推敲(すいこう)や歌の取捨選択を重ねたことが分かる。
 社会主義者幸徳秋水らが処刑された大逆事件(10年)に衝撃を受けた啄木は、社会主義思想に傾倒した。「ココアのひと匙(さじ)」など8編を収めた詩稿ノート「呼子と口笛」の社会主義への期待感を率直につづった詩句と素朴な字体からは、啄木の熱意と息遣いが見て取れる。
 仙台で05年に土井晩翠と芸術談義を交わした際にささげた詩原稿や、仙台で撮った写真を貼った歌集なども展示されている。
 啄木は「はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る」などと詠んだ。赤間亜生学芸室長(47)は「その作品は没後100年たっても心に響く。現代に通じる言葉や宮城とのゆかりを知り、人間啄木を感じてほしい」と話す。
 6月29日まで。入場料は一般700円、高校生400円、小中学生200円。連絡先は仙台文学館022(271)3020。

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