「今年は夏じゃなかった」東北の海水浴場、涙雨

東北の海水浴場は今夏、記録的な長雨と低温が響き、来場者が減った。特に東日本大震災で被災し、復活を遂げた太平洋側での影響は大きく、軒並み開店休業状態。灰色続きの空が、復興ムードに水を差した。多くが開設期間を終えた20日以降、天候が回復し始める皮肉な状況に、関係者からは恨み節が上がった。

「今ごろ天気が良くなって」。やりきれない様子で話すのは、20日で菖蒲田の営業を終えた宮城県七ケ浜町産業課の担当者。
津波被害を受け昨季は10日間の試験開設だった。本格再開の今季は37日間で8万人の人出を見込んだが、4万9911人にとどまった。「8月上旬の台風5号の後も天候が回復しなかった。フルオープンで期待したが…」と表情を曇らせる。
震災を経て7年ぶりに再開した海水浴場は復活の出はなをくじかれた。越喜来(おきらい)浪板(大船渡市)は集計が残る2002年以降で最少の1051人。「今年は夏じゃなかった」(市観光物産協会)と嘆く。
サンオーレそではま(宮城県南三陸町)は目標4万人の半分弱の1万8066人で夏を終えた。町観光協会の及川吉則会長(51)は「天気には勝てず、仕方ない。海と親しむ場を大切に育てたい」と前を向く。
薄磯(いわき市)は震災前の1割未満の1万7261人。唯一、海の家を開いた民宿経営鈴木幸長さん(64)は残念がる一方で、「再開できたことが大事で、来年に向けた一歩。数年かけて入り込みを増やしたい」と先を見据えた。
復活4年目の吉里吉里海岸(岩手県大槌町)は9033人を集めた。砂像作りなどのイベント効果で何とか昨季比約1割減にとどめたが、海に入らない人が目立ったという。町商工観光課は「来年は防潮堤工事で開設できないかもしれないだけに残念だ」と話す。
青森、秋田、山形3県の主な海水浴場も湯野浜(鶴岡市)は昨季の7割、合浦公園(青森市)、下浜(秋田市、31日まで開設)も5~6割程度に沈んだ。7月から週末は雨にたたられ「今までにない低い数字」(青森市文化スポーツ振興公社)だった。
東北は22日ごろから気温が上がり、夏の日差しが戻ってきた。本格再開2年目の月浜(東松島市)で海の家を営む小野勝見さん(68)は海水浴場が閉じた20日以降も営業を続ける。「反動で残暑が厳しくなるかもしれない」と、バーベキューなどで今後訪れる人に熱い期待を掛ける。

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