「仙台市の宿泊税は200円に」有識者会議が提言 零細免除の設定明記

仙台市が観光振興の財源として導入を目指す宿泊税を巡り、有識者でつくる市交流人口拡大推進検討会議は16日、ホテルや旅館の宿泊者に1泊200円を課すことを柱とする報告書を郡和子市長に提出した。同様に宿泊税の導入を検討する県は3000円以上の宿泊に対して一律300円の課税を軸とする方向。市は詳細な制度設計や県との調整を本格化させる。

 報告書は、修学旅行には課税しないのが適当としつつ、部活動や各種大会への参加といった教育活動全般の免除については慎重な検討を求めた。零細の宿泊事業者に配慮し、宿泊料金が一定額以下の場合に徴収を免除する基準「免税点」の設定も明記した。

 課税期間は当初3年をめどとし、その後は5年ごとに延長などを含めて見直す。市は毎年、税収や使途を公表し、観光関連団体や学識経験者を交えた官民連携組織が効果を検証する。

 使途に関連し、強化すべき観光振興策の事業規模を年間15億~23億円と試算。青葉山、中心部、温泉地、東部の4区域で施設改修やコンテンツづくりを重点的に進め、観光地としての魅力向上を要望した。

 市役所で郡市長に報告書を手渡した会長の吉田浩東北大大学院経済学研究科教授(公共経済学)は「継続的で安定的な財源の確保には宿泊税の導入が妥当だ」と説明。市が直近5年間の平均で観光施策に一般会計から年間約15億円を充てている点を挙げ「合わせて倍以上に強化する」ことを提言した。

 検討会議は2020年1月、県の宿泊税導入方針を受けて市が設置。導入を容認する方針をまとめたが、コロナ禍で議論を休止。23年11月に再開してから5回の会合を重ねた。

「市民にも間接的にメリット」検討会議会長の一問一答

 検討会議の吉田浩会長は報告書の提出後、報道各社の取材に「宿泊税を財源にした事業を通じ、交通利便性が高まるなど都市環境が良くなれば、市民にも間接的に便益は及ぶ」と導入の意義を語った。主なやりとりは次の通り。

 -宿泊者に税の導入をどう理解してもらうか。

 「仙台市は宿泊代をバーゲンセールして他と対抗する都市ではない。200円払ったけど、200円以上の楽しさが得られる仙台にしていくことが重要だ」

 -零細の宿泊事業者を中心に反対意見は根強い。

 「会議では主に(1)宿泊代が上がることで宿泊者が減る(2)税を徴収する事務負担が大きい(3)税収が適切に活用されるのか-という懸念が出た。この3点を報告書に記録として残し、事業の透明性確保や事業者への配慮も盛り込んだ」

 -免税点の考え方は。

 「(1人1泊200円で導入した場合の税率は)宿泊代が2000円なら10%、2万円だと1%と(高くなるほど税率が下がる)逆進税になる。需要のシミュレーションや事業者からの聞き取りをして、(宿泊代が)1万円以下で適切な水準を設定してほしい」

「県内同一税額」の知事案に郡市長が同調

 仙台市と県がそれぞれ導入を目指す宿泊税の税額について、郡和子市長は16日の定例記者会見で「(村井嘉浩)知事の『県内で統一すべきだ』という考えに同調する」と述べ、全県で同額となるよう県と協議を本格化させる意向を示した。

 市の有識者会議は16日、宿泊者1人1泊200円が妥当とする報告書を郡市長に提出。県は1人1泊3000円以上の宿泊客に300円を課税する4年前にコロナ禍で撤回した条例案をベースに検討する。

 村井知事は15日の定例記者会見で「県が300円、市が200円で計500円にするか、県の300円の中で200円を市の分とするか、市と大枠の協議が必要だ」と説明。「市と歩調を合わせて対応していきたい。できれば県内で一律同額が望ましい」との見解を示していた。

 郡市長は「県の300円と市の200円で計500円になると結構な負担になる」と指摘。単純に積み上げる形の課税には消極的な考えを示唆した。

 課税免除の範囲を巡り、郡市長は「教育旅行、東日本大震災の学習旅行への課税はどうなのかという議論もあったようだ。県との調整も必要になるが、子どもたちの学びに関して、できるだけ避けるべきだろうと思う」と語った。

 条例案を市議会に提出する時期については「県との協議が進めば、早ければ6月、難しければ9月というタイミングになるだろう」と言及。「インバウンド(訪日客)の追い風を受け、国内でも競争が始まる中、仙台、宮城、東北が勝ち抜くかを考えれば、早い方がいいだろう」と話した。

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