分析結果を国内外に発信
仙台市と東北大災害科学国際研究所(災害研)は9日、2015~30年の国際的な防災行動指針「仙台防災枠組」の指標に基づく仙台市の21年までの達成状況をまとめた「中間評価」を発表した。災害による経済損失の低減など、七つの減災目標はいずれも達成した。
自治体が達成状況の評価をまとめたのは仙台市が初めて。今後、東北大と評価手法を含めた分析結果を国内外に発信して、自治体レベルの実践を呼びかける。
七つの目標のうち四つは、そのまま仙台市に当てはめて検証。「途上国支援」「災害リスクへの人々のアクセス向上」といった目標は、それぞれ「視察・研修の受け入れ状況」「市危機管理局のツイッターフォロワー数」と自治体で取り組み可能な内容に変更した。
七つの目標は、東日本大震災を含む期間との比較ということもあり、いずれも「達成中」と判定。「視察・研修の受け入れ状況」は、新型コロナウイルスの感染拡大で一時的に減ったものの期間全体としては高い評価となった。
独自に加えた災害種別の評価も実施した。「風水害」は05~14年との比較で、被災者数や経済損失の削減など四つの目標で「未到達」だった。15年の台風18号、19年の台風19号が大きく影響した。
中間評価は、仙台防災枠組の折り返し時期となる23年3月に合わせて、仙台市と災害研が共同で実施した。市は災害と取り組み状況のデータを提供し、災害研が05~14年と15~21年で比較分析した。
市役所で9日に共同記者会見があった。今村文彦災害研所長はトルコ南部で6日に発生した地震に触れ、「事前の防災の重要性を世界中の人が感じている。他の地域でも災害を繰り返さないように教訓と経験を届けていくことが重要だ」と強調した。
郡和子市長は「市の取り組みが世界の防災減災に大きな役割を果たせるように発信していきたい」と話した。
郡市長は3月10~12日に市内で開かれる国際会議「第3回世界防災フォーラム」で中間評価の詳細を発表する予定。
仙台防災枠組 2015年3月に仙台市で開かれた国連防災世界会議で採択された15~30年の国際的な防災行動指針。七つの減災目標は(1)10万人当たりの死者数(2)10万人当たりの被災者数(3)経済損失(4)インフラ被害(5)防災戦略を持つ国の数(6)途上国支援(7)災害リスク情報へのアクセス。「防災・減災に投資し、レジリエンス(回復力)を高める」など四つの優先行動も提起した。