「和紙」のユネスコ無形文化遺産登録を受け、埼玉、岐阜両県の生産地では27日、未明まで決定を待ちわびた関係者らが喜びを分かち合った。「技術が世界に認められた」「力になる」。守り続けた伝統が世界に認められ、歓喜の輪が広がった。
正式登録は午前3時前。本美濃紙を生産する岐阜県美濃市では、登録が決まると和紙を染めた色とりどりの紙吹雪がまかれ、武藤鉄弘市長(62)や職人ら、市の施設に集まった数十人が笑顔で万歳を繰り返した。
正倉院にも残る日本最古の紙の一つで、高級障子紙などに使われてきた本美濃紙。保存会の鈴木豊美副会長(62)は「両親の跡を継ぎ、伝統を残す一念でやってきた。うれしくて言葉がない。ただ先人に感謝です」と破顔した。武藤市長は「1300年続いた技を1000年先まで残すため、後継者育成の基金を作りたい」と抱負を述べた。
埼玉県東秩父村や小川町で作られる細川紙は丈夫な特性を生かし商家の大福帳やふすま紙に重用された。同村の工房では、登録の連絡を受けた技術者協会の鷹野禎三会長(79)が松本恒夫町長(67)らと固く握手し、職人らがくす玉を割った。
会見した鷹野会長は「登録は宝物だ。受け継いできた技術が認められ、大変ありがたい」と、やや疲れた顔をほころばせた。松本町長は「登録は暮らしの中から姿を消しつつある和紙の良さを知ってもらう大きな力になる」と意気込んだ。