住んでみたい街の理想と現実には、得てして大きな差があるものだ。憧れのあの街は果たして本当に素敵な街なのか? まったくノーマークだけど、実は住みやすい街は? 今回は「古河」(茨城県古河市)について、ライターの金子則男氏が解説する。
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SUUMOの「住みたい街ランキング」(関東)の最新版が3月上旬に発表されましたが、今年のランキングの特徴は、都心からやや離れた街が大きくランクを上げたこと。つくば(38位→26位)、流山おおたかの森(49位→39位)、辻堂(86位→50位)、小田原(94位→73位)、本厚木(141位→99位)といった街がランクを大きく上げましたが、中でも注目すべき街が、今回取り上げた古河(こが)です。
郊外の街の人気が上昇したのは、コロナ感染拡大に伴う生活スタイルの変化と関連したものと思われますが、古河は112位(2018年)→108位(2019年)→84位(2020年)と年々順位を上げ、今年は一気に60位までジャンプアップ。正直、メディアで名前が取り上げられることはあまり無い街ですが、いったいどんな街なのでしょう。
古河は、茨城県西端に位置し、南は利根川を挟んで埼玉県、北はすぐに栃木県、西に行けば群馬県の県境もすぐ近く。県庁所在地の水戸よりも、宇都宮や大宮、東京の方が繋がりが強い街です。古くより日光街道の宿場町として栄えました。
鉄道はJR東北本線(宇都宮線)のみですが、湘南新宿ライン、上野東京ラインが通っており、池袋、新宿、渋谷、上野、東京、大宮、横浜、宇都宮など、いずれも乗換なしでの移動が可能。惜しむらくは新幹線駅が無いことでしょうか。東北新幹線の線路は街を通過していますが、新幹線は停まりません。
道路状況はボチボチです。南北方向には、東京~宇都宮~仙台~青森までを結ぶ国道4号が、東西方向には複数の国道が通っており、ロードサイド店舗が多いので、住むなら車があった方が圧倒的に便利。ただ、高速道路の入り口がやや遠いのが弱点で、高速に乗るまでに20~30分を要します。付近には利根川や渡良瀬遊水地があり、それを越える橋の前後は渋滞ポイント。橋は迂回や脇道が無いので、諦めるしかありません。
都心まで1時間の場所で「庭付き一戸建て」も
古河の最大の魅力は、何と言っても物件の安さでしょう。「古河」「茨城県」と聞くと、都心からとんでもなく遠い場所を想像する方もいるかもしれませんが、東京からの距離は約60km。東京駅を起点とすれば、成田や平塚とほぼ等距離です。成田や平塚で、駅から歩ける場所に一軒家を持とうと思えば、最低でも3500万円は用意する必要がありますが、古河なら2500万円でお釣りが来ます。上述の通り、JRで都心までダイレクトアクセスが可能で、大宮まで30分強、上野、池袋、新宿、東京まで、60分前後でたどり着けます。
車社会ではありますが、駅周辺には徒歩圏内にスーパーや商業施設がたっぷりあり、日常の買い物に不自由はありません。旧・日光街道付近は、歴史ある街並みが広がっており、文学館や歴史博物館があるあたりは、ほんの一区画ではありますが、京都や鎌倉のような雰囲気の一角もあります。
距離はありますが、都心まで乗車時間が1時間なら十分通勤・通学圏内。リモートワークと併用できるのなら、いよいよ楽勝です。コロナ禍で郊外生活に注目が集まっていますが、古河の人気上昇はコロナ前から始まっており、それはこの街の実力の証。自然は豊富、ゴルフ場もすくそば、利根川沿いでのジョギングやサイクリングは快適と、遊びの選択肢は豊富で、夏には花火大会、冬には街の自慢の提灯竿もみまつりが開催されます。
郊外移住というと、真っ先に候補に上がるのは湘南や房総の海沿い、長野や山梨などの高原地区といったところですが、北関東を蔑ろにするのはあまりに惜しいのではないでしょうか。