住民税が非課税になるのは年収いくらから?わかりやすく解説
教育無償化の対象が「住民税非課税世帯」など、自治体や国のサービス、給付の対象が住民税非課税世帯に限定されることはよくあります。この住民税非課税世帯とは、いったい年収いくらなのでしょうか?
住民税は均等割と所得割から
個人の所得に対してかかる税金には所得税と住民税があります。所得税は国に納めるもので、住民税は住んでいる都道府県や市町村に納めます。
この住民税ですが、所得税とは少し違った考えで課税されています。住民税は住民が地域社会の費用を分担するためのものというところです。
この考え方から、住民税は定額負担の「均等割」と所得金額に応じて負担する「所得割」があります。均等割は自治体によって違いますが、標準税率として市町村民税3500円、道府県民税1500円の合計5000円(※1)。
※1:復興財源確保のため、平成26年度から令和5年度分までの間、標準税率が年1000円(市町村民税500円、道府県民税500円)引き上げられています。また、超過課税を実施している自治体があるため、5000円より高額になる場合もあります
それに対して、所得割は所得に応じて税額が決まります。また、以下の人は均等割、所得割とも課税されません。
・生活保護の規定による生活扶助を受けている
・障がい者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年中の合計所得金額が135万円以下
住民税非課税世帯は世帯全員が均等割非課税
他にも、均等割と所得割に対して、非課税限度額がもうけられています。両方が非課税になれば住民税非課税ということになります。そして世帯家族全員が住民税非課税であれば、住民税非課税世帯ということです。
【非課税限度額の基準】
■均等割……所得金額≦35万円×世帯人数+10万円+21万円(※2)
■所得割……所得金額≦35万円×世帯人数+10万円+32万円(※2)
世帯人数:本人、控除対象配偶者および扶養親族の合計数
※2:21万円、32万円の加算は、控除対象配偶者又は扶養親族を有する場合のみ
均等割の方が基準が低いため、均等割が非課税になれば住民税非課税ということです。
会社員、専業主婦、子ども2人世帯では年収255万円以下
具体的にどのような金額で住民税が非課税になるのでしょうか? ここでいう所得は、収入から経費(会社員等は給与所得控除)を引いたものです。
■会社員(独身)……年収100万円以下
所得金額が45万円以下で住民税非課税。
【年収100万円】-【給与所得控除55万円 ※3】=【所得45万円】
■会社員、専業主婦、子ども1人の3人世帯……年収205万円以下
所得金額が136万円(35万円×3+10万円+21万円)以下で住民税非課税。
【年収205万円】-【給与所得控除69万5000円 ※3】=【所得135万5000円】
■会社員、専業主婦、子ども2人の4人世帯……年収255万円以下
所得金額が171万円(35万円×4+10万円+21万円)以下で住民税非課税。
【年収255万円】-【給与所得控除84万5000円 ※3】=【所得170万5000円】
※3:給与所得控除額は年収によって変わります
限度額は自治体によって、4人家族で32万円の差!
ただし、住んでいる地域によってこの均等割の非課税限度額が変わります。これは生活保護基準と関連しているから。生活保護基準の級地区分として1級地(東京23区、指定都市)、2級地(県庁所在市、一部の市町)、3級地(一般市・町村など)と分けられており、これに応じて均等割の非課税限度額の基準が変わります。
【均等割の非課税限度額】
■1級地:所得金額≦35万円×世帯人数+10万円+21万円(※4)
■2級地:所得金額≦31万5000円×世帯人数+10万円+18万9000円(※4)
■3級地:所得金額≦28万円×世帯人数+10万円+16万8000円(※4)
※4:21万円、18万9000円、16万8000円の加算は、控除対象配偶者または扶養親族を有する場合のみ
上の年収試算は1級地での基準ということになります。2級地、3級地になると限度額基準が少し低くなります。例えば、3級地で4人世帯であれば、限度額は所得138万8000円。1級地では171万円ですから32万2000円の差がでてきます。お住まいの基準を確かめて限度額を計算してみてください。
上記は令和3年度(令和2年1月1日から令和2年12月31日の間に得た収入)以降の個人住民税の例です。令和2年度までは基準の所得が10万円低くなりますが、給与所得控除が10万円高かったため、給与所得者の実質の非課税枠は同じです。
文:福一 由紀(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後システムエンジニアとして勤務。2人の子どもを出産し退職後FP資格を取得。女性のFP仲間とともに会社を設立し、セミナー、執筆、各種メディアへの企画監修、コンサルティングなどを行っている。
(文:福一 由紀(ファイナンシャルプランナー))