低体温や冷え性の人が増えているといわれる中、「体温を上げる」をキーワードにした書籍が注目を集めている。でも、体温を上げると本当に健康になるのだろうか? そもそも体温は何度くらいが適温なのか? 専門家は「自身の平熱を知ることが何より重要」と話す。(道丸摩耶)
▼書籍が大ヒット
今月下旬、「体温を上げる」をキーワードにした書籍が2冊、書店に並ぶ。
サンマーク出版(東京都新宿区)から発売される『体温を上げると健康になる 実践編』(斎藤真嗣(まさし)著)。一方、廣済堂出版(中央区)が発売するのが『体温を上げて 代謝アップ やせるレシピ133』(石原結實(ゆうみ)著)だ。
いずれも以前発売された書籍の続編に当たる。
「昨年3月、『体温を上げると健康になる』を発売しました。70万部を超える大ヒットとなり、昨年のベストセラーランキングでは総合10位に入りました」とサンマーク出版の担当者。
体温を上げて免疫力を高め、酵素を活性化させると健康になれるというのが斎藤氏の主張。「前回は理論編といえる内容。どうすれば体温が上がるかという問い合わせが多く寄せられたため、今回は体温を上げるための運動や食事など実践的な内容です」(サンマーク出版)
一方の廣済堂出版は今年1月、石原氏の『体温を上げて 病気にならない かんたん野菜レシピ144』を出したところ、好評。今回は「代謝」をテーマに第2弾のレシピ本を企画した。
ほかにも、大手書店の健康本コーナーには体温や冷えをテーマにした本が多く並ぶ。
▼「低体温」の増加
医療機器メーカー「テルモ」(渋谷区)が運営するホームページ「テルモ体温研究所」によると、人間の平熱は平均36・89度。「37度は微熱」と思われがちだが、37度程度が平均の平熱なのだ。体温に詳しい「ひかりの里クリニック」(山梨県甲斐市)の入來正躬(いりきまさみ)院長は「体温は36~37度が正常値といわれる。42度を超えると障害が起き始めるので、37度くらいがちょうどよい」と解説する。
なぜ今、「体温を上げよう」というキーワードが話題になるのか。
背景には「低体温」の増加がある。ナビタスクリニック立川(東京都立川市)の久住英二院長は「医療機関には体調の悪い人しか来ないので、偏りがあるかもしれないが、確かに体温が低い人が増えている気はする」と話す。
体温が35度台の「低体温」では血行が悪くなり、風邪にかかりやすいといわれる。だが、久住院長によると、平熱が35・5度の人が36・5度で『だるい』と受診することもあるといい、平均体温の37度に近づくことが「健康」とも言い切れない。
入來院長も「36度以下でも元気で暮らしているのならそれでよい」と、「体温を上げれば健康」という説には疑問を呈する。それよりも「体温には個人差があるので、自分の平熱を知ることが何より大事」なのだそうだ。
■正しい検温から始めよう
テルモによると、飲食や入浴、運動をした後や外出からの帰宅直後は検温は避けた方がよいという。脇で測る場合は、脇のくぼみの中心部に体温計を当て、手のひらを上向きにして脇をしっかり締める。口で測る場合は、舌の裏の奥にある筋の横に体温計の先端をあてる。電子式なら電子音が鳴るまで、水銀式なら5~10分間、動かずに測ることが必要だ。