「作る」から「活かす」へ変化した都市計画とは

東京中枢部の高層ビル群は、世界的にも類を見ない。世界最高峰の価格設定がなされた都心の土地に、これまた世界一厳しい建築基準法をクリアするべくふんだんに予算のかけられたビルがひしめきあっているのだ。そこに動く金額たるや、やはり世界でも群を抜いている。そんな調子だから、たとえばある企業が新たに小さな自社ビルを建てようと思った際に計上されるコストも、規模からは想像もつかないような価格だ。そうかと思えば、ちょうど移転したい先には空きフロアだらけのビルがあったりもする。ただ、所有会社は賃貸物件とする気がないようで、せっかく空いているのに遊ばせるがままとなっている。
いま、都市計画は「作る」ことから「活かす」方向へとシフトチェンジしつつある。家に対するニーズが「新築」から「リノベーション」へと推移していることを引き合いに出すまでもなく、それはもう個人レベルにまで浸透している一つのベクトルなのだ。上述のような需要と供給のズレは、過渡期には避けられないジレンマでもある。
そして、株式会社TKPの事業はまさに次代の都市計画に一役買う存在として注目を集めている。同社の事業はライバルも多い貸スペース業だ。会議室、オフィス、イベント会場までを直営にて運営、それらの空間を各企業へ提案し、同時にそこへ付随する設備貸与やケータリングサービス、イベント遂行にあたっては代行業務まで、全てを執り行う。ニーズに応じて適切なスペースをリーズナブルに貸し出すことで、これまで月間約8000社に利用され、直営会議室は1111室となり、そのシェアを一気に高めている。
彼らの方法論はこうだ。まず、資産回転率の悪化した遊休資産を保有するオーナーから、その資産を購入もしくは運営権の委託を得る。それによりユーザーに対して低価格帯で会議室を提供することを可能とする。結果的にオーナーに対しても、回転率の改善による資産価値の高まりを叶えられる。
IT化によって、既に成熟しきっていると思われていた業界でもその隙間を埋めるように規模を広げた会社は多く存在する。貸スペース業は典型的なリアルビジネスで、そこへITの波を持ち込む企業はTKP以前にはなかった。彼らはITツールを駆使することで、圧倒的な集客力をそなえることに成功したのだ。
利用者の求める機能を有する施設を、ITを駆使して的確に、迅速に、安価にて提供。都市に対してはムダのない空間活用を、設備投資に慎重にならざるを得ない企業に対しては低コストでの空間利用を実現。まさに時代のニーズに適合した戦略で、今後ますますそのシェアは伸びていきそうだ。

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