多くの日本のメディアにとっては“予想外”の結末だったようだ――。
現地時間11月5日に投開票がおこなわれた米大統領選では、共和党のドナルド・トランプ前大統領が民主党のカマラ・ハリス副大統領を破り、第79代大統領に就任することが確実になった。
「トランプ氏が当選に必要な選挙人270人を確保したのは、現地時間で6日の早朝でしたが、トランプ氏はその3時間前には勝利宣言をおこないました。今回、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネヴァダ、ノースカロライナ、ペンシルヴェニア、ウィスコンシンの各州がいわゆる“激戦州”とされ、トランプ氏はこれら7つのうち5つの州で勝利を収めた形です」(政治担当記者)
当然、同選挙は日本でも大きな注目を集め、民放各局が番組内で行方を見守っていた。
「多くのコメンテーターが、拮抗しているため開票結果は数日後になる、といった話やハリス氏が優勢である、というスタンスで話していた印象です。少なくとも、トランプ氏が有利である、という予測を大々的に発表していたメディアは少ないでしょう。結果的に予測を外してしまったといえます」(同前)
X上では、予測のズレを指摘する声が相次いでいる。
《トランプ氏の勝利確実で、日本のTVはお通夜状態》
《事実の認識と分析をせずに、ただ願望だけで米大統領選挙を予測した日本のマスコミ、評論家、学者、タレントの姿が情けない》
《なにもトランプ礼賛しろってんじゃないのよ。冷静に客観的にフラットにお伝えできないのかと》
《ハッキリ言って大統領選の偏向報道は日本の恥にしか見えんかった》
いったいなぜ日本のメディアが“ハリス寄り”になったのか。現地の大手紙特派員記者はこう語る。
「そもそも、日本のメディアが提携している米国のメディアは、ABC、CBS、NBCという3大テレビ局や、CNNなどのリベラル寄りのメディアがほとんどなんです。一方、トランプ氏を支持する保守派のFOXニュースなどは、一時期NHK-BSで流れていましたが深い繋がりのあるところは少ないでしょう。当然、リベラル寄りのメディアはハリス氏に期待感を持って報じるので、そのまま日本でも似たような報道が出た、ということです。
それに、政策面において日本にとって予想しやすいのはバイデン大統領の方針を引き継ぐハリス氏です。トランプ氏は“米国第一主義”であり、同盟国である日本にとってプラスになるのかわかりません。米国そのものを、リベラルで先進的な国だと考える日本の一部のインテリ層にとって、ハリス氏を応援するのは当然のこと。今回の選挙予測は、ハリス氏に勝ってほしいという願望が予測を“捻じ曲げた”といえるでしょう」
トランプ氏に投じた米国民の多くは、民主党政権下で直面した“生活苦”がその動機とされる。
「トランプ大統領は移民対策などの公約を前面に掲げていますが、今回の勝因はこうした思想信条というよりも、米国民が抱える“生活苦”がいちばんの理由ですよ。
コロナ終息後、米国の物価上昇率は全産品で20%、食料品では体感値で30%以上とされています。賃金も上昇していますが、物価にまったく追いついていません。そして、こうした状況に責任があるのは、バイデン大統領であり、副大統領だったハリス氏なんですよ。日本も物価高に対して賃金が追いついていませんが、米国の状況はこれより悪い。米国の有権者の身に置き換えて考えれば、答えは簡単だったのかもしれません」(同前)
ここからはいかにトランプ政権と向き合うか。日本の外交能力が試されることになる。