「健康にいい生活」で脳が老化?一刻も早くやめたい生活習慣とは

近年、認知症の患者は増え続けている。厚生労働省によると、2025年にはその数は700万人を超えるとされており、これは65歳以上の5人に1人が認知症になる計算だ。一方で、年をとってもいつまでも見た目が若々しく、頭の回転が速い人もいる。このように、認知症になる人とならない人では、一体何が違うのだろうか。『ボケない人がやっている 脳のシミを消す生活習慣』(青春出版社刊)の著者・本間良子氏/本間龍介氏が認知症になる原因を解き明かし、日常で気をつけるべき習慣について解説する。

「健康的な生活」が脳を老化させていた!

□頭が疲れたときは甘いものをとる。□認知症予防に、DHA・EPAがとれるという「ツナ缶」をよく料理に使う。□部屋が暗いと目が悪くなるから、夜は照明を明るくする。

普段このような生活をしていないだろうか。実は、アメリカの抗加齢医学会の最新報告によると、これらはすべて脳に悪く、認知機能低下を招く生活習慣とされている。「健康のため」と思ってやっているはずの習慣が、実は脳に悪影響を及ぼしているかもしれないのである。

そもそも、なぜ脳の機能は低下していくのだろうか。認知症の中でも有名なアルツハイマー型認知症、さらにパーキン症候群など認知症以外の脳神経の病気には、ある共通点がある。それは、「脳にシミがあること」。具体的には、脳に「アミロイドβ」と呼ばれるたんぱく質がたまり、それが正常な神経細胞を壊すことで脳の委縮が起こるのである。つまり、このアミロイドβが「脳のシミ」であり、これが蓄積されることが脳機能低下の原因となるのだ。

最初に挙げた生活習慣は、どれも「脳のシミ」をつくりやすいものであり、これを続けるとアルツハイマー型認知症などを引き起こす恐れがある。

しかし、アミロイドβを除去しても病気が治るわけではない。たとえば、肌のシミをレーザー治療で除去しても、また紫外線を浴び続ければシミはできてしまう。それと同様に、脳のシミを除去できても、また何らかの理由でシミができてしまえば症状は悪化してしまうのだ。さらに、脳のシミは、肌のシミと違って目に見えないだけに、除去するほどたまっているかどうかも確認しにくいのも難しいところである。

そこで、現在アメリカの抗加齢医学会では、アミロイドβを除去するのではなく、「なぜアミロイドβがたまってしまうのか」「アミロイドβをためない体をどうつくるか」にシフトしてきている。つまり、今や「シミをとる」のではなく、「シミをためない」「シミを排除できる体にする」ことが新常識になっているのである。そうなると、その場の対応ではなく、日々の生活習慣の積み重ねがより重要となってくるだろう。

肌に“シミ”がない人はボケにくい!?

失礼な言い方かもしれないが、久しぶりに会った人を見て急に老け込んだと感じることはないだろうか。この時、私たちが何をもって“急に老けた”と判断するかというと、シミやシワの見た目である。さらに、がんの患者はシミとシワが非常に増えることからもわかるように、シミは老化だけでなく病気のサインでもあるのだ。

一方で、シミもシワもなく見た目も美しい人は、往々にして話し方も理路整然としており、ボケなどとは程遠い印象を受けると著者はいう。皮膚にシミが多い人は脳にもシミが多いとは言い切れないが、皮膚にシミが増えるような生活をしている人は、脳にもシミが多い可能性は高いだろう。皮膚のシミの大きな原因は紫外線だが、実は体内でシミができやすい状態になっていることも考えられる。シミができやすい状態とは、一体どのようなものなのだろうか。

まず、細胞と細胞には、それらをつなぐ「タイトジャンクション」という接着剤のようなものがある。これがゆるんでしまうと、体内で様々な障害を起こしてしまう。たとえば、アトピー性皮膚炎の子どもの皮膚は荒れているが、これは皮膚の細胞のタイトジャンクションがゆるんでいる状態であり、毒素が入りやすい状態になっているのだ。したがって、荒れた皮膚からは異物が侵入しやすくなるため、アレルギーを起こしやすいことがわかっている。

他にも、「腸」に起きる症状で、「リーキーガット症候群(腸もれ症候群)」というものがある。腸の粘膜の炎症が進み、腸の細胞をつなぐタイトジャンクションがゆるんで、腸管壁に穴が開き、腸もれを起こしている状態だ。

実は、皮膚や腸に起きているようなことが、脳にも起こっているのである。脳の細胞と細胞をつなぐタイトジャンクションがゆるみ、本来なら脳に不必要な要素が入りやすい状態になってしまっているのだ。タイトジャンクションがゆるんでいる状態のことを、皮膚の場合は「リーキースキン」、腸の場合は「リーキーガット」というが、脳の場合は「リーキーブレイン」という。今、この「リーキーブレイン」の状態にある人が増えてきている。つまり、「脳のダダもれ状態」が起きているのだ。では「リーキーブレイン」は何が原因で起きてしまうのだろうか。

認知症になりやすい人がよく摂っている「○○」とは

先ほど述べたように、細胞と細胞の接着剤であるタイトジャンクションをいい状態に保つことは、認知症予防において非常に重要である。いい状態のタイトジャンクションとは、いい栄養は入れて有害なものを入れないように、適度にオープンしたりクローズしたりする状態だ。これがゆるみきってしまうと、何でもじゃんじゃん入ってきてしまう。

では、なぜタイトジャンクションはゆるんでしまうのだろうか。その原因は、「小麦」である。具体的には、小麦などの穀物に含まれるたんぱく質、グルテンの構成成分の1つでもある「グリアジン」がタイトジャンクションをゆるめてしまう犯人なのだ。

どういう仕組みかというと、まず、この「グリアジン」は細胞膜に刺激を送り、細胞からゾヌリンという成分を分泌させる。ゾヌリンには、細胞と細胞の隙間をあけ、通過をよくする作用があるのだが、これは本来悪いことではなく、隙間をあけることによって必要なものを入れる役目をはたしているのだ。

しかし、毎日のように小麦をとり続けることによって、ゾヌリンが分泌され続けると、この隙間があきっぱなしになってしまう。するとその隙間から、本来は入ってほしくないような有害物質やバクテリアまでもが入ってきてしまうのである。この現象はまず、「小腸の粘膜」で起きており、これが「腸もれ」=リーキーガットの状態なのだ。

さらに、ゾヌリンの影響は腸だけにはとどまらない。血管に入ったゾヌリンは、血流にのって脳にまで到達するからだ。脳には本来、不要なものや危険なものは入らないようにする「血液脳関門」という関所のようなものがある。脳はとても重要な臓器であるため、必要なものだけを入れて脳を守るバリアのような存在だ。しかし、この「血液脳関門」も一枚岩ではなく、やはりつなぎ目はある。そのつなぎ目に、ゾヌリンが作用すると、関門があるにもかかわらず、そのゲートは開かれてしまうのだ。これは「リーキーブレイン(脳もれ)」の仕組みである。つまり、「腸もれ」が起きていると、血流にのって「脳もれ」にもつながってしまうということなのだ。

極端なことをいえば、タイトジャンクションがゆるんでいても体内に有害なものが一切なければ問題はないだろう。しかし、食事、ストレスをはじめ現代は有害なものが身の回りにあふれている状況だ。そのような環境で、次から次へと有害なものが入ってくると、体内に免疫細胞があふれ、脳に炎症を起こしてしまう。そして、この炎症が一種の老化現象なのだ。脳内の炎症とアルツハイマーや、脳の炎症と認知機能の低下が深く関わっていることは、すでにいくつもの論文で明らかにされている。

大切なのは、脳内の炎症を起こす前に何ができるか、あるいは、脳内の炎症を起こさないようにするには何ができるか、である。さらに、すでに脳もれを起こしてしまっている脳を、もれない脳にすることが重要だ。次回は、毎日の生活の中で脳に対してどのようないいことができるか、具体的に紹介していきたい。

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