「偽装留学生」排除へ 勉強は二の次、実態は“出稼ぎ” 審査厳格化へ

勉強よりもお金が大事? 平成27年度に20万人の大台を超え、増加を続ける日本への外国人留学生。しかし、全体の6割超を占める中国やベトナムなど5カ国からの留学生の一部が、実際は“出稼ぎ”を目的とした「偽装留学生」化している実態が問題化している。事態を重く見た法務省は、受け入れ審査の厳格化を求める文書を各地方の入国管理局に発付。不法就労や不法滞在の温床ともなっている現状の適正化に乗り出した。

「日本に来たのは働いてお金を稼ぐため」。7月、千葉県内で取材に応じたネパール国籍の男子留学生(23)はこう明かした。男子留学生は週6日、大手宅配会社で深夜帯の集荷アルバイトに従事。日本語学校に通っているが、「授業中はほとんど寝ている。でも、私だけじゃなく同級生の大半が同じ」と悪びれる様子はない。“お金が第一、勉強は二の次”との考えが留学生の一部に広がっている実態がうかがえる。

「留学」の資格で日本に滞在している外国人であっても、資格外活動の許可を取れば週28時間までのアルバイトが可能だ。しかし法務省関係者によると、フルタイムで働いたり、留学先から失踪し不法滞在になったりする留学生が多く、詐欺など犯罪に手を染めた例もあるという。

こうした問題が起きる要因の一つに、生徒確保を最優先する一部の日本語学校や専門学校の存在もある。「入学金や授業料目当てに、偽装留学生だと知りながら受け入れる学校も少なくない。不法就労を助長するような悪質な学校さえある」(法務省関係者)。実際、昨年11月、栃木県足利市の日本語学校が、入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで、群馬・栃木両県警に摘発された。同校は、ベトナム人男子留学生2人を系列の労働者派遣会社で雇用し、違法な長時間労働に従事させていた。

さらにチェック体制の不備も指摘されている。日本語教育機関が留学生を受け入れる際の審査は以前、法務省から審査業務を請け負った「日本語教育振興協会(日振協)」が行っていた。しかし平成22年の民主党政権(当時)の「事業仕分け」で仕組みが変わり、法務省が直接審査を担当することに。「審査は膨大で、細やかな調査ができなくなり、審査は甘くなりがちとなった」(法務省関係者)という。

偽装留学が一部で常態化していることを踏まえ、法務省は今年1月、各地方の入国管理局に対し、「留学」の在留資格を得るための申請に必要な書類の提出を厳格化する指示文書を発付。「留学費用の支払い能力」などを証明するため、費用負担者の金融機関の残高証明書や所得証明書、納税証明書などの提出が義務付けられた。今年7月以降の入学予定者から適用されているという。

関係者によると、審査厳格化の対象は、中国▽ベトナム▽ネパール▽ミャンマー▽スリランカ-の5カ国の留学生と、受け入れ先となる日本語を専門的に教える日本語学校や専門学校だ。政府は20年、日本理解を深め、国際交流を活発化させるため「留学生30万人計画」を策定。留学生受け入れの拡大を推進していた。一方で、審査が不十分で、就労目的の留学生の増加が問題となる中、法務省が適正化に乗り出した格好だ。法務省関係者は「一部の日本語教育機関が『偽装留学生』の窓口となっている。審査の厳格化で留学制度の適正化を図っていく必要がある」と話している。

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